身体介助だけに限定されない
得意を生かせる職場づくりを大切に
シニア人材を採用する際のポイントとして、「介護現場で働くのだから、身体介助の仕事をしてもらう」ことを前提とせず、本人の得意なことを介護現場でどのように役立てられるのか、という視点をもつことが挙げられます。得意な分野で力を発揮して働いてもらうことで、ミスマッチが起こりにくくなります。
そのため、日ごろから事務処理や経理、庭木の手入れ、利用者募集のための営業活動など、介護の専門性が高くなくてもできる業務を、職場内で整理しておくことも大切です。得意とすることを生かせる職場であることがわかれば、働く側の満足感も高まります。さらに、身体介助などの専門性を身に付けている介護職員にとっても、本来の業務に集中できるようになり、業務の効率化にもつながります。
また、年齢などから「どうせこれはできないだろう」と一方的に判断してしまうと、その人の力を正確に見極めることができなくなってしまいます。採用時の面接などでは、本人の希望やどのような働き方をしたいかを聞き出すとともに、介護事業者側からも仕事のやりがいとともに大変さもしっかりと説明し、互いの「介護現場で働く」イメージを合致させていくことが大切です。これは、年齢や職種に限らず、多様な人材が活躍するうえで必要なことです。
多様な人材の活躍は
質の高いケアの提供にもつながる
いざシニア人材を雇用した際に、一緒に働く職員に対して、どのような仕事を任せるのかを説明しましょう。「多様な仕事をする仲間とともに、同じ介護現場を支えていく」ということを、職場全体で共有することが大切です。新入職員としても、自分が何を求められて働くのかがより理解でき、仕事へのモチベーションが高まるでしょう。
また、接し方に迷う人もいるかもしれません。大切なのは、年長者に対し敬意を払うということです。これは介護現場であれば、利用者への接し方と同様でしょう。難しく考えることはなく、敬語を使い、“さん”付けで呼ぶといった対応を心掛けることで、互いに気持ちよく働けます。加えて、介護研修など、他の新人職員などと同じように扱うことも大切です。学ぶことで介護の現場を深く理解できますし、職場への愛着心も高まり、定着率向上につながる可能性もあります。
高齢者も含めて、多様な人材が職場にいることでコミュニケーションが活発になり、互いに頼り・頼られるような働きやすい職場となることが期待できます。それは結果として、より質の高い介護の提供につながることでしょう。
(提供:株式会社日本医療企画)
以上
※総務省統計局「高齢者の就業に関する統計」より
https://www.stat.go.jp/data/topics/topi1292.html
図表出典:
内閣府「令和元年度 高齢者の経済生活に関する調査」
(注)60歳以上の男女を対象とした調査(n=1,755)
https://www8.cao.go.jp/kourei/ishiki/r01/zentai/index.html
取材協力:有限会社アリア 代表取締役 松本すみ子氏