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医療事務

医療接遇に取り組むことで「選ばれる医療機関」になる!

公開日/2021.12.28 更新日/2024.07.22

よりよい医療サービスを提供するため、接遇に取り組む医療機関が増えています。一般的には挨拶の仕方やお辞儀の角度、言葉遣いなど、接客スキルなどをイメージしますが、実はそれだけではありません。医療機関における接遇と、通常の接遇との違いについて解説します。

※この記事は2021年12月28日時点で公開されたアーカイブ記事となります。

医療接遇の基本は「患者に寄り添い、ニーズに応えること」

医療機関の接遇については、サービス業をはじめ一般的な接遇と大きく違うことを認識しておく必要があります。

受診で来院する患者のなかには、緊張や不安な気持ちを抱えていて、「重い病気だったらどうしよう」などと、ネガティブに考えてしまいがちです。特に初診の場合、医師との対面は緊張した状態となっています。そこで、患者の張りつめた気持ちをほぐす試みをしてみましょう。

受付、検査、外来などにいるすべての医療スタッフは患者の目線に立って寄り添うことを意識して対応します。患者がどうして来院したのか、何を一番必要としているのかを常に考え、行動することが医療接遇の基本です。患者のニーズに応え、自分たちが持っている医療のすべてを提供するという姿勢を示せばいいのです。

とはいえ、医師や看護師が一人ひとりの患者に時間をかけて向き合うのには限界があります。そこで受付を担当する医事スタッフが、医師と患者との間の架け橋となる役割を担うようにします。来院時の患者への対応、立ち振る舞いが病院の印象を決めてしまい、その後の診療と医療機関の経営のそれぞれに影響を及ぼすからです。最近では患者対応のコンシェルジュを配置する医療機関もあります。

例えば、受付では「診察券と保険証をお願いします」と用件のみ伝えるのではなく、「恐れ入りますが、診察券と保険証のご提示をお願いします」など、丁寧な言葉をひと言添えると印象はよくなります。また、「何か困っていることはありませんか?」「座っているのがお辛いようでしたらお声かけください」といったように、患者の様子を見て声かけする気遣いや配慮も必要です。患者の味方であること、目の前にいる患者に対して自分ができることは何かと考え、行動すれば自然に応対ができるようになります。患者から聞き取った内容で診療に影響を与えるものは、即座に医師や看護師にフィードバックします。それによって医師と患者との心の距離がぐっと近くなります。

患者の安全はスタッフの安心感がもたらす

医療において何よりも大事なのはセーフティ、安心・安全という考え方です。人の命にかかわることなので患者との信頼関係がいったん壊れると、取り戻すのは困難を極めます。医療安全はISO9001や日本医療機能評価機構などの第三者評価によって担保したとしても、そのことを患者に伝えるのは難しいことです。患者が「安心」と感じられなければ、「安全」を提供したことにはなりません。

患者の安心の多くは、医療スタッフがもたらすものであり、安心感をもって仕事をしていれば患者にも伝わります。こういった医療機関の雰囲気、空気をつくるのも医療接遇です。来院する患者は体調が悪いだけでなく家庭でのトラブルや不満など、ネガティブな感情を抱えていることもあり、その感情を引きずったままでは診療にも悪い影響を与えてしまいます。その時に医療機関が、心がなごむ、ホッとする場であればネガティブな感情が薄れ、患者の安心・安全につながります。

一方、患者からのクレームにはお詫びをしたうえで、誠意をもった対応を行う必要があります。加えて、医療スタッフへの対応やフォローも重要です。動揺したままではインシデント・アクシデントを引き起こしやすい状況となり、患者との信頼関係が損なわれることになりかねません。医療機関の経営者、管理職がスタッフに対しても接遇を心がけ、院内の人間関係の構築に取り組むことでクレームを最小限に抑えられます。

個々に対応するコミュニケーションスキルが大事

患者に対して、基本的な挨拶や身だしなみを整えておきましょう。医療機関の身だしなみには言葉かけ、相手との心地よい距離感といった心理的アプローチも含まれます。これらはマニュアルに則ったものではなく、実際に患者と接するなかで自分自身を振り返りながら、適したものを見つけていきます。

医療接遇では通り一遍ではなく、個々の患者に合わせた対応が求められます。そこで大事なのはコミュニケーションスキルです。人は会話において、自分が80%話さないと満足できないと言われています。特に患者と医師との間では、医師のほうが圧倒的に話すことが多いので、意識的に患者の話を聴く、思いを引き出すようにします。

コミュニケーションは対患者だけでなく、医療スタッフ間においても欠かせません。コミュニケーションが低下すると組織力も下がり、前述したインシデント・アクシデントの発生につながります。コロナ禍ではスタッフ同士でもコミュニケーションを図りづらくなっています。そこでチームで取り組む業務を増やし、必然的にコミュニケーションをとる環境をつくりましょう。医療機関において、よい人間関係を築くためのスキルと空気をつくるのが医療接遇です。

少子高齢社会など医療を取り巻く環境の変化によって、患者が医療機関を選ぶ時代となっています。医療接遇は、選ばれる医療機関になるための差別化の施策の一つです。自宅からのアクセスや医師の診療スキルだけでなく、医療スタッフの印象も選ぶ際の理由となっているからです。接遇によって患者からの安心や信頼を得ることが、「また受診したい」「家族や友人に紹介したい」といった思いにつながり、ひいては経営にもプラスに働きます。

(提供:株式会社日本医療企画)
以上

図表出典:
図表は、厚生労働省「生衛業マニュアル」p8の女性のものをベースに作成しています
https://www.mhlw.go.jp/content/000643407.pdf

取材協力:医療法人社団ワイズレディスクリニック 瀬川裕史理事長

著者プロフィール

著者:ソラストオンライン
サイト管理人
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