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特定共同指導とは?共同指導との違いや実施の流れ・病院経営者がやるべき準備を紹介

公開日/2025.01.07 更新日/2025.01.07

特定共同指導とは、対象の医療機関に対して厚生労働省と都道府県が共同で実施する指導のことです。適正な保険診療の遂行を目的に、診療記録やレセプトの点検、施設基準や算定要件の遵守状況などがチェックされます。今回は、特定共同指導の概要や実施の流れ、病院経営者がやるべき準備・対策などを解説するので、医療機関の経営者の方はぜひ参考にしてください。

特定共同指導とは?

特定共同指導とは、保険診療が適正に遂行されているかを確認するために、厚生労働省が主体となって実施する個別指導です。

特定共同指導とは、保険医療機関に対して厚生労働省などが実施する個別指導の一種です。保険診療の取り扱いや診療報酬請求などの業務が正しく行われているかをチェックします。具体的には、診療記録やレセプトの点検、診療行為の根拠や施設基準の遵守状況などを確認します。

特定共同指導の対象となるのは、臨床研修指定病院や大学附属病院、特定機能病院などと、比較的規模が大きく、高度な医療を提供している医療機関です。

特定共同指導の対象となる病院

対象となる病院 ・臨床研修指定病院、大学附属病院、特定機能病院
・同一開設者に係る複数の都道府県に所在する保険医療機関
・特定共同指導が必要と認められる保険医療機関
実施の通知時期 調査日の1ヵ月前を目途に実施通知を送付
指導担当者 ・地方厚生局長が指名する技官、事務官、非常勤の医師、歯科医師、薬剤師、看護師
・厚生労働省保険局医療課の医療指導監査担当官
指導の内容 保険診療の取り扱い、診療報酬請求事務、診療報酬の改訂内容、過去の指導事例を講習や講演で行う

参考:厚生労働省「○保険医療機関等及び保険医等の指導及び監査について」

特別共同指導は、厚生労働省保険局医療課を主体とし、地方厚生(支)局や都道府県が共同で実施しています。

特定共同指導の対象となるのは、医師の卒後教育修練や高度な医療を提供している臨床研修指定病院や大学附属病院、特定機能病院といった比較的規模の大きい医療機関です。そのほか、一定の条件を満たす薬局なども対象になる場合があります。

特定共同指導が実施される理由

・診療報酬請求が適切に行われているかを確認するため
・保険診療のルールを周知徹底するため

特定共同指導は、指導の対象となる医療機関が正しく保険診療を取り扱い、適切な診療報酬請求が行えているかを調査するために実施されています。

指導の対象となるのは、各都道府県を代表する医療機関です。厚生労働省と都道府県が共同し、各都道府県を代表する医療機関に対して、正しい保険診療を周知徹底させるための機会として機能しています。

特定共同指導と共同指導・他の監査の違い

医療機関には、特定共同指導のほかさまざまな指導や監査が行われます。下記は、医療機関に対して実施される指導・監査の種類です。

指導・監査の種類 概要
指導集団指導診療報酬改定時など、保険医療機関の管理者や保険医等を一定の場所に集めて講義形式で行われる指導。
集団的個別指導レセプトの平均点数が高い医療機関を対象に一定の場所に集めて講義形式等で行われる指導。
個別指導新規開業してから1年経過した医療機関を対象の「新規個別指導」と支払基金や保険者などからの情報提供やレセプトが高点数に該当する医療機関を対象として行われる個別面談形式の指導。
適時調査施設基準の届出を行っている保険医療機関を対象に、届出要件を満たしているかどうかを確認するために実施される。
監査診療内容や診療報酬請求に不正又は著しい不当が疑われる場合に、的確に事実関係を把握し、 公正かつ適切な措置を執るために実施される。
立入検査(医療監視)病院では原則年に1回、医療法に基づく人員や構造設備等の基準や管理体制が遵守されているかを保健所が調査する。

指導は健康保険法第73条にて、医療機関の義務とされているものです。指導には大きく3種類があり、そのうち個別指導の一種が特定共同指導です。特定共同指導は個別指導の中でも最も厳しい指導形態であり、併せて集団指導が実施されます。

適時調査は、医療機関が適正な施設基準に沿って運営できているかをチェックするための調査です。また、以前「医療監視」と呼ばれていた立入検査は、医療法で定められた基準が遵守されているかを確認するため、年1回必ず実施されます。

一方、監査は不正や著しい不当の疑いのある医療機関にのみ実施されるため、法令遵守のもと運営できている医療機関には無縁となるでしょう。

特定共同指導を実施する流れ

特別共同指導の対象となった医療機関には、指導日の1ヵ月前を目安に通知がきます。対象となった場合に備え、特定共同指導が実施される流れを確認しておきましょう。

1.選定委員会の協議のもと、指導対象の医療機関が決定する

特定共同指導の対象となる病院は、選定委員会の協議によって決定されます。選定委員会は、地方厚生(支)局長が指名する技官や事務官などを構成員とした組織です。

なお、特定共同指導の対象となる医療機関は、臨床研修指定病院や大学附属病院、特定機能病院などであること、同一開設者に係る複数の都道府県にある保険医療機関などといった、複数の基準から選定されています。

2.特定共同指導の実施日や準備書類等について通知される

選定された医療機関には、特定共同指導の実施日や準備すべき書類のリストが書面にて通知されます。通知を受け取ったら、指導に向けて必要な体制を整えるようにしましょう。

【通知書に書かれている主な内容】

・特定共同指導の根拠規定と目的
・指導の日時と場所
・出席者
・準備すべき書類等

3.実施日までに必要な資料や書類の準備を進める

通知を受け取ったら、通知書に記載されている必要資料や書類を用意しましょう。

【特定共同指導の実施に必要な書類一覧】

(1) 診療録、看護記録等、診療に関する諸記録(別途連絡する患者の初診時からのすべての記録(予約簿を含む))
(2) 特定保険医療材料、薬剤等の購入・納品伝票(直近1年分程度)
(3) 酸素の購入単価の算定基礎となる書類(当該年度の単価の算定の根拠となった購入・納品伝票)
(4) 審査支払機関からの返戻・増減点通知に関する書類(直近1年分程度)
(5) 食事および寝具設備並びに医療事務に係る関係帳簿類および委託契約書
(6) 指定承認申請・届出事項関係書類
(7) 病院案内(2部)、入院案内(2部)
(8) 入院申込書綴
(9) 診療費請求書・領収書(控)
(10) 入院患者外出・外泊許可書綴
(11) 特別療養環境室入室患者同意書綴
(上記の(8)から(11)については、直近1年分程度)
(12) 次の文書の様式(記載前のものを2部。コピーでも可)
①入院申込書、②診療費請求書・領収書、③入院患者外出・外泊許可書、④特別療養環境室入室患者同意書、⑤診療録、⑥院外処方せん
(13) 患者ごとの一部負担金徴収に係る帳簿または患者ごとの内訳のある日計表等(直近1年分程度)
(14) 病院の現況
(15) 薬剤部関連資料
① 薬剤管理指導記録
② 薬剤情報提供に係る文書
(16) 「患者一覧」に掲げた患者15名に係る退院時要約(サマリー)の写し(DPC算定機関のみ)
(17) 先進医療に関する諸記録(別途連絡する患者分)
① 診療録、看護記録、診療報酬明細書(保険分控)等、診療に関する諸記録
② 先進医療の内容および費用に関する患者の同意文書
③ 先進医療に係る患者の支払額を確認できる書類
④ その他の関係書類

引用:厚生労働省「特定共同指導等の実施に係る取扱いについて」

4.面接懇談方式で特定共同指導が実施される

特定共同指導の実施方法は、面接懇談方式です。医療機関の代表者や関係者が直接指導者と対話しながら、書類の確認を行い指導します。特定共同指導では、厚生労働大臣から日本医師会に対して立ち会い依頼することも可能であり、指導に日本医師会が立ち会う場合もあります。

指導が終了すると、指導者から口頭で結果が説明されます。

5.指導結果に応じた措置や改善報告書の提出を行う

指導結果は、大きく以下4つの評価に分類されます。

概ね妥当 診療内容および診療報酬の請求に関して、概ね妥当適切(問題なし)
経過観察 診療内容および診療報酬の請求に関して、適正を欠く部分が認められるが、その程度が軽微かつ診療担当者の理解も十分得られており、改善に期待できる
再指導 診療内容または診療報酬の請求に関して、適正を欠く部分が認められ、再指導を行わないと改善状況が判断できない
要監査 不正または不当が疑われた結果、「監査要綱」に定める監査要件に該当するため、後日監査を実施する

医療機関は指導結果に応じ、指摘事項の改善に取り組んだり、再指導や監査に応じたりする必要があります。指摘があった場合には、後日「改善報告書」の提出が求められます。

特定共同指導における主な指摘事項

対象 主な指摘事項 指摘事項の例
医科 ・施設基準関連
・医療情報システム関連
・診療関連
・薬剤部門関連
・看護・食事関連
・管理・請求事務関連
・掲示・届出関連・管理請求事務
・包括評価関連
◆施設基準関連
・各病棟における夜勤を行う看護職員が3人以上配置されていない
◆医療情報システム関連
・運用管理規程に定められているシステムの監査を実施していない。
◆診療関連
〇診療録等
・診療録は、保険請求の根拠となるものなので、医師は診療の都度、遅滞なく 必要事項の記載を十分に行うこと。
〇傷病名
・傷病名の転帰の記載がない。
・医学的な診断根拠がない傷病名がある。
・医学的に妥当とは考えられない傷病名がある。
・医学的な診断根拠のない「レセプト病名」を付与している。
など
歯科 ・診療録等の記載
・基本診療料
・医学管理等
・在宅医療
・検査
・画像診断
・リハビリテーション
・歯周治療
・処置等
・手術
・麻酔
・歯冠修復および欠損補綴
・歯科矯正
・診療報酬の請求等に関する事項
◆診療録等の記載
〇診療録
・診療録は保険請求の根拠であることを認識し、必要な事項を十分に記載すること。
・診療録の整備及び保管状況について不備な例が認められたので、診療録が散逸しないように適切に編綴すること。
など
◆基本診療料
○ 初診料
・診療が継続している場合に、算定している。
〇歯科診療特別対応加算
・診療録に記載すべき内容(算定した日の患者の状態)について、画一的に記載している又は記載が不十分である。
・著しく歯科診療が困難な者に該当していない場合に算定している。
など
薬局 ・調剤全般に関する事項
・調剤技術料に関する事項
・薬学管理料に関する事項
・事務的事項
◆調剤全般に関する事項
○処方箋の取扱い
・「処方」欄の記載に不備のある処方箋につき、疑義照会をせずに調剤を行っている。
例:用法・用量の記載が不適切等
○処方内容の変更
・処方箋に変更の内容を記載していない。
など
◆調剤技術料に関する事項
○自家製剤加算
・調剤録等に製剤工程の記載がない。
・医薬品の特性を十分理解し、薬学的に問題ないと判断していない。
○計量混合調剤加算
・医薬品の特性を十分理解し、薬学的に問題ないと判断していない。
など

出典:厚生労働省「特定共同指導・共同指導における指摘事項」

特定共同指導での主な指導項目は、上記のとおりです。指摘事項は実施当時の施設基準や算定要件などに基づいて指導されており、かつ医療機関の個別の症例なども関係してくるため、必ずしも上記の指摘事項に該当するとは限りません。

日頃から適正な保険診療や診療報酬請求を心がけることはもちろん、その年の施設基準や算定要件などもしっかりと理解しておくことが大切です。

特定共同指導に向けてやっておくべき3つの対策

日頃から法令の遵守と正確な診療報酬請求を徹底する

日頃から法令を守り、正確な業務を徹底することが1番の対策といえます。特定共同指導の目的は、保険診療や診療報酬請求が適切かつ正確に行われているかをチェックすることです。たとえ不備があったとしても、特定共同指導の通知が来てからでは対策は間に合わないでしょう。

正確な保険診療の取り扱いや診療報酬請求は、医療機関の収入や経営状態の安定、不正や不当を阻止するためにも欠かせません。

医療機関で働く全スタッフの教育体制を整える

診療報酬請求業務を正確に実施するには、スタッフの教育が必須です。正しい知識とスキルが備わっていないと、間違ったやり方で日々の業務を進めてしまい、指摘事項に該当するミスがどんどん増えてしまいます。

新規スタッフに対する研修はもちろん、既存のスタッフに対するスキルアップ研修も実施するなど、教育体制の整備も対策につながります。

優秀な人材の確保に努める

新規スタッフを採用する場合、人材の見極めも重要です。とくに、現場が忙しく十分な教育時間を確保できない医療機関では、即戦力の採用が求められます。そうでなくとも、医療スタッフとして仕事に責任を持てるか、未経験でも学ぶ意欲があるかなど、さまざまな観点から人材を見極めましょう。

ソラストの医療機関経営支援サービスでは、実際に個別指導や随時調査に対応してきた実績をもとに、貴院の“適切な保険診療体制の構築”に向けた取り組みを支援しています。

日頃から正確に業務を行い、特定共同指導に備えましょう

特定共同指導は、臨床研修病院や大学附属病院、特定機能病院など地域の中でも規模が大きく、重要性が高い機能を担う医療機関を対象に実施されます。保険診療の取り扱いや診療報酬請求が正しく行われているかがチェックされるため、日頃から正確に業務に取り組むよう心がけましょう。

特定共同指導に向けて、各医療機関は法令遵守の体制を整え、スタッフが業務を適正に遂行できる環境の構築を求められます。

ソラストでは、医事業務受託で培った業務運営の経験、適時調査や個別指導に対応してきた実績をもとに、貴院の“適切な保険診療体制の構築”に向けた取り組みをご支援いたします。

著者プロフィール

著者:ソラストオンライン
サイト管理人
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