スマートホスピタルとは?事例や採用のメリット・デメリット・実現に向けて必要なこと
スマートホスピタルとは、ICT機器やAIなどの最新技術により、医療業界のDXを実現する手段の1つです。スマートホスピタルによって、医療従事者の業務効率化や医療サービスの質向上、患者さんの利便性向上が目指せます。今回はスマートホスピタルについて、病院経営者や開業医向けに概要や主な事例、実現のメリット・デメリット、実現に向けてやるべきことをご紹介します。
スマートホスピタルとは?
スマートホスピタルとは、ICT機器やAIといったITを用いて、医療現場における業務効率化や働き方改革、患者さんの利便性向上など、さまざまな改革を目指す取り組みです。
医療業界は深刻な人手不足な状況にありますが、高齢化社会の進展に伴い、スマートホスピタルの需要が高まっています。限られた人員の中でも医療サービスの質を高め、患者さんが必要なときに必要な治療を受けられるようにするには、スマートホスピタルによる業務効率化が必要です。
スマートホスピタルの構想・導入が進められる背景
・医療現場の人手不足
・医師の地域偏在
スマートホスピタルの実現が進められる背景には、上記3つの現状が大きく関係しています。
とくに、高齢化社会の進展と現場の人手不足は大きな課題です。こうした状況下でも安全かつ適切な医療の提供が求められ、患者さんが良質な治療を受けられる環境を整える必要があります。
現状の課題を解決し、患者さんが住み慣れた地域で適切な医療を受けながら暮らし続けるためにも、スマートホスピタルの実現が求められています。
スマートホスピタルを実現するための4つの事例
具体的に何に取り組むことで、スマートホスピタルの実現につながるのでしょうか。ここでは、スマートホスピタルを実現するための4つの事例をご紹介します。
電子カルテ
電子カルテは、スマートホスピタルを実現するにあたり代表的な事例です。電子カルテは紙のカルテに比べて情報の検索や共有が容易であり、カルテ入力やレセプト作成といった事務業務の効率化につながります。
現場の業務効率化だけでなく、他の医療機関同士でスムーズに患者さんの情報を連携できるといったメリットもあります。
遠隔診療
ICT機器を活用することで、オンラインによる遠隔診療もできるようになります。近くに医療機関がない患者さんが専門医の診察を受けられるようになるなど、医療へのアクセスが飛躍的に向上するでしょう。
遠隔診療の導入・整備が進むことで、医療資源が限られている地域でも質の高い医療サービスを提供できるようになります。さらに、災害やパンデミック下でも迅速な医療提供が可能となるでしょう。
ナースコールシステム
近年、看護師を呼ぶだけでなく、患者さんの心拍数や呼吸の状態など必要な情報を遠隔でモニタリングできるナースコールシステムが普及しています。看護師が患者さんの元へ行かなくても、基本的な情報を確認できることは看護体制の最適化に有効です。現場の生産性向上にもつながるでしょう。
AIを活用した診断支援システム
AIの活用によって、膨大な医療データの収集や解析が可能です。AIを活用した診断支援システムでは、診断の精度を高めるサポートを行います。
AIのサポートがあることで医療従事者はより迅速かつ正確な診断が下せるようになり、患者さんに一層適切な治療の提供が可能となります。さらに、医師の負担が軽減され、業務効率化にも有効です。
スマートホスピタルを実現するメリット
スマートホスピタルを実現することは、上記のようにさまざまなメリットがあります。少子高齢化や現場の人手不足がさらに進展する今後に備え、スマートホスピタルのメリットを押さえましょう。
提供する医療サービスの質の向上を目指せる
病院にとってのメリット | ・迅速かつ正確に診断を下せるようになる ・患者さんからの信頼が向上する |
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クリニックにとってのメリット | ・情報共有が容易になり、患者さん情報を適切に管理できる |
AIを活用した診断支援システムは、医療サービスの質向上を目指せるスマートホスピタルの代表例です。AIの活用によってビッグデータを用いた診断が行えるようになり、病院やクリニックの医師はより迅速かつ正確に診断を下せるようになるでしょう。
また、電子カルテシステムの導入も医療サービスの質向上に有効です。患者さんのデータを一元管理できることで、情報をより適正に扱えます。病院やクリニックにおける診療ミスの削減や、最適な治療の提案につながるでしょう。
医療の質が向上すれば、患者さんは今まで以上に適切な治療が受けられるようになり、病院への信頼も高まるでしょう。結果として、病院の収益面でもメリットが得られます。
地域医療連携体制を整備できる
病院にとってのメリット | ・地域のクリニックへの逆紹介がしやすくなる |
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クリニックにとってのメリット | ・専門医療を扱う病院へスムーズに紹介できる |
電子カルテシステムがあることで、病院から病院、病院からクリニックなど他の医療機関同士で患者さんの診療情報を共有できる体制が整います。地域の医療連携体制をより強化できるでしょう。
たとえば、クリニックから高度な専門医療を扱う病院への紹介がしやすくなったり、病院から地域のクリニックへ逆紹介したりと、患者さんの症状や病状に合わせて最適な医療サービスが受けられる環境を整えられます。
結果として、患者さんは自分の状態に合わせてそのときに必要な治療を迅速に受けることが可能です。たらい回しにされるリスクが減り、より安心して地域の病院やクリニックを利用しやすくなります。
患者さんの利便性や満足度の向上が期待できる
病院にとってのメリット | ・遠方に住む患者さんの遠隔診療ができる |
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クリニックにとってのメリット | ・医師数が少ないクリニックでも、患者さんの待ち時間短縮を目指せる |
オンライン診療システムの活用により、病院から離れた地域に住んでいる患者さんに診療を提供できるようになります。
また、医師数の少ないクリニックでオンライン予約システムを導入すれば、患者さんの待ち時間の短縮を目指せるでしょう。
オンライン診療システムがあれば、通院が難しかったり、近くに医療機関がなかったりする患者さんにも必要な医療が提供できるようになります。待ち時間の短縮によって患者さんの負担を軽減でき、病院・クリニックともに満足度向上につながります。
医療サービスの質向上と同様に、病院やクリニックにおける収益面でも大きなメリットです。
医療従事者の業務効率化や負担軽減につながる
病院にとってのメリット | ・適切な人員配置ができるようになる ・各職種の働き方改革につながる |
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クリニックにとってのメリット | ・各職種が専門的な業務に集中できるようになる ・事務業務などの負担が軽減される |
大きな病院において、スタッフの所在を把握できるシステムを導入すれば、人員配置の見直しに役立ちます。
また、病院・クリニックどちらにおいても、ICT技術の導入により日常業務の一部が自動化されつつあります。情報管理システムにより、書類作成や情報伝達の時間が短縮されることは業務効率の向上に有効です。医療従事者はより専門的な業務に集中できるようになり、医療サービスの質向上や医療事故・ミスの低減にもつながります。
患者さんも、医療従事者に向き合ってもらえる時間が増えることで質の高いケアが受けられたり、不安や疑問を解消するための対応をしてもらえたりと、医療機関への心理的安全性が高まるでしょう。
スマートホスピタルのデメリットと課題
一方で、スマートホスピタル化することはデメリットや課題もあります。スムーズにスマートホスピタルを導入するためにも、あらかじめデメリットや課題を理解しておくこともポイントです。
設備を整えるための導入コストがかかる
病院にとってのメリット | ・大きな病院の場合、部署やスタッフの数だけ設備を準備・導入する負担がかかる |
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クリニックにとってのメリット | ・設備の導入コストがかかり、経営を圧迫する可能性がある |
スマートホスピタルの実現には設備導入が必要であるため、当然コストがかかります。導入時だけでなく、その後運用を続けていくための維持費も必要です。
とくに大きな病院の場合は、導入するシステムによっては部署やスタッフの数だけ設備を用意する必要があります。手配の負担もコストも膨大にかかる可能性があるでしょう。小規模なクリニックの場合は、設備導入のコストがかえって経営状態を悪化させるケースもあります。
そのため、いきなり多額のコストをかけてとりあえず設備を導入するのではなく、まずは自院・自クリニックの課題や改善点を洗い出して、本当に必要な設備が何かを明らかにしましょう。ゆとりをもった導入計画が立てられます。
一方、医療DXの推進が、診察料や入院料の値上げに影響する点は患者さん側のデメリットとなります。しかし、この点はスマートホスピタル化によって医療サービスの質や利便性が向上すれば不満につながりにくいでしょう。
ICT機器の種類が多く、選定・導入が進まない
病院にとってのメリット | ・部署ごとに必要な設備の判断が難しい ・大きな病院の場合、医療従事者の教育コストがかかる |
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クリニックにとってのメリット | ・患者さんの層によっては、導入した設備をうまく活用できない場合もある |
スマートホスピタルの実現につながるICT機器には、さまざまな種類があります。自院・自クリニックにとって本当に必要なものが何かを判断するのに時間がかかり、導入が進みにくいといった課題もあります。
大きな病院ほど部署やスタッフの人数が多く、必要な設備の選定に悩んでしまう可能性があるでしょう。加えて、働く医療従事者の数だけ教育コストも必要です。
また、高齢の患者さんが多いクリニックの場合、せっかくICT機器を導入してもうまく活用しきれない可能性もあります。患者さんの層に合わせて、適切なICT機器の選定が欠かせません。
加えて、病院・クリニックどちらの場合も、患者さん側のITリテラシー(ITに関する知識やITツールを使いこなせる能力)が追いつかず、かえって利便性が低下するリスクもあるでしょう。
セキュリティ面でリスクがある
病院にとってのメリット | ・大きな病院ほど扱うデータの数が多く、情報漏洩のリスクが高まる |
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クリニックにとってのメリット | ・より高度なセキュリティ対策をする必要がある |
スマートホスピタルの実現において、セキュリティ対策は避けて通れない重要な課題です。
患者さんの個人情報や診療情報は機密性が高く、情報が漏洩すると患者さんのプライバシーに重大な影響を及ぼしてしまいます。とくに、大きな病院の場合は扱う情報の量も膨大です。実際に情報漏洩してしまうと、患者さんに迷惑をかけてしまうだけでなく、医療機関は信頼を失ってしまうでしょう。
一方、患者さん側も情報管理に関する規定や情報共有の範囲について理解を深める必要があります。
医療機関側が万全なセキュリティ対策を講じることは大前提に、患者さんにもわかりやすい説明を行うなど、積極的なサポート体制と患者さんとの協力が必要です。
スマートホスピタルの実現に向けて「病院経営者」がやるべきこと
・課題を解決できるソリューションの選定
・人材育成
病院の経営者は、まず自院の現状の課題を洗い出し、スマートホスピタルで解決できるポイントを整理しましょう。スマートホスピタルにはさまざまな施策があるため、課題に応じて適切な施策を検討することが大切です。
課題だけでなく、実現したい医療体制や医療サービスなども踏まえて具体的な取り組みを考えるのも一つの手です。
そして、スマートホスピタルを実現するのは医療従事者たちです。具体的なソリューションを導入したとしても、それを医療業務に活用できないとスマートホスピタルは実現しません。デジタル技術を活用できる人材の育成や、変革に柔軟に対応できる組織体制を構築することも病院経営者のやるべきことといえます。
スマートホスピタルの実現に向けて「開業医」がやるべきこと
・自院の課題・患者さんの層に合わせたソリューションの選定
・資金の確保
開業医の方も、やるべきことは病院経営者と大きく変わりません。
しかし、医療機関としての機能や患者さんの層は病院とは異なります。とくに、地域のかかりつけ医として機能しているクリニックの場合、患者さんの層によってスマートホスピタルの実現が重要かどうかも変わってくるでしょう。
スマートホスピタルの実現にはコストもかかります。まずは自クリニックが果たす機能や患者さんの層を踏まえ、医療サービスの質や患者さんの利便性向上にもっとも有効なソリューションから段階的に導入していくことがおすすめです。
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スマートホスピタルを実現し、医療の質や患者さんの利便性を高めよう!
高齢化社会の進展や医療現場の人手不足が深刻な現代では、スマートホスピタルが解決策の一つとなります。スマートホスピタルを実現することで、現場の多くの業務が効率化できるだけでなく、医療の質や患者さんの利便性向上にもつながります。
スマートホスピタルの実現に向けて、まずは自院・自クリニックの課題や実現したい医療体制を整理し、それを可能とするソリューションを検討しましょう。
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