病院の地域連携室とは?役割や仕事内容、職種についても解説
地域連携室とは、自院と地域内の他の医療機関や介護・福祉施設などをつなぐ部署です。地域包括ケアの必要性が高まっていることもあり、地域連携室を設置する病院が増えています。今回は、地域連携室の主な役割や仕事内容、設置が必要な理由についてご紹介。これから地域連携室の設置をお考えの病院経営者さまはぜひ参考にしてください。
地域連携室とは?
地域連携室は、地域における他の病院やクリニック、福祉施設などとの連携を目的に、病院内に設置される専門部署です。「地域医療連携室」や「患者支援室」、「連携センター」など、病院ごとに名称は異なります。
地域連携室は、患者さんが適切な医療や支援をよりスムーズに受けられるよう、地域の医療・福祉にかかわる橋渡し役として機能しています。
【地域連携室の役割】前方連携と後方連携
前方連携 | 後方連携 |
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患者さんの受診・入院時に行う連携 | 患者さんの退院〜その後の日常生活を支えるための連携 |
【具体例】 ・地域の医療機関からの診療予約 ・地域の医療機関からの転院相談 ・患者さんの入院相談 など |
【具体例】 ・患者さんの退院調整・支援 ・かかりつけ医の紹介・手配 ・患者さんの医療福祉相談 など |
地域連携室の役割には「前方連携」と「後方連携」の主に2つです。詳しい役割と具体例についてみていきましょう。
【地域連携室の役割】前方連携
前方連携とは、患者さんが病院を受診したり、入院・転院したりする際に行う連携です。医療機関同士で密接な連携が取れていることで、患者さんの情報共有がスムーズになされ、患者さんは症状に応じて迅速に適切な医療機関で診察・治療が受けられます。
【地域連携室の役割】後方連携
後方連携は、急性期の治療を終えた患者さんの退院からそれ以降の生活に関わる連携です。患者さんがよりスムーズに日常生活に戻れるよう、退院時期の調整や支援、必要に応じてかかりつけ医の紹介などを行います。
地域連携室の仕事内容
・紹介状、返書の管理
・紹介受診調整、受診手続き
・検査の予約、案内
・入院時の案内
・入院時の基本情報の聴取
・退院調整
・医療相談
・地域の情報収集や病院の広報誌の作成 など
地域連携室で行う主な業務は、上記の通りです。主に前方連携・後方連携に関わる業務を行いますが、病院の広報活動や患者さんの検査の予約・ご案内などにも対応します。
病院が担う機能や規模によって、地域連携室の業務はさまざまです。地域連携室を運営するためには、地域における自院の役割を理解する必要があります。
そして、外部との連携も重要ですが、まずは院内で連携を強化していくことが重要です。
地域連携室に所属する職種とその役割
地域連携室では、多職種連携で業務を行っていきます。ここでは、地域連携室で働く主な職種と役割を紹介します。
医師
医師は、室長などといった肩書きで部署の統括者として所属しているケースが多く、病院内外の医師との調整役を担います。一方、病院の規模によっては、地域連携室に医師が所属していない場合もあります。
・地域連携室の業務統括者
・病院内外の医師との調整役
看護師
入院や転院に伴うベッドコントロールや入院時の患者さんへの基本情報の聴取、入院の説明などを行います。看護師は、不安を抱えて受診される患者さんにとって心強い存在です。患者さんの疾患だけでなく、精神的な面でのサポート役も担います。
なお、地域連携室には1人以上の看護師を置いている病院が多くみられます。
・受診・入院時の手続きやベッドコントロール
・患者さんが安心して受診・入院できるためのサポート
医療ソーシャルワーカー
医療ソーシャルワーカーの役割は、看護師らと連携して患者さんやご家族の困りごとや要望に対応することです。主に入院時から退院後、在宅療養中の困りごと・要望に対して、患者さんの生活状況をふまえてご家族や地域との連携をサポートしていきます。
現状、医療ソーシャルワーカーとして1人以上の社会福祉士や精神保健福祉士を設置している病院が多いです。
・患者さんやご家族の困りごと、要望への対応
・患者さんとご家族、地域との連携をサポート
事務員
地域連携室の事務員は、紹介状や返書の管理、地域連携室内のデータ管理などを行います。また、研修会の案内など地域連携室の運営に関わる対外的な業務を担う役割もあります。事務員は地域連携室の円滑な運営に欠かせない存在です。
・地域連携室内外の事務業務
・地域連携室の運営サポート
地域連携室を設置する4つの理由
地域連携室は、必ずしも設置しなければならない部署ではありません。しかし、各地域の高齢化が進展する中では、地域連携室の役割が重要性を高めています。ここでは、病院が地域連携室を設置する4つの理由を解説します。
患者さんがより適切な医療を受けられるようになる
院内に地域連携室を設置することで、地域の医療機関や福祉サービス間での連携がスムーズに進み、患者さんの紹介や移送の効率が高まります。結果として、患者さんはより自分に適した医療を迅速に受けられるようになります。
また、病院が担う機能に合わせた適切な医療を提供しやすくなる利点もあります。たとえば、急性期医療を主に行う病院の場合、患者さんを適切な医療機関に割り振ることで、病院側は重症の患者さんに対して診療を行う時間を確保できます。
効率的に診療が進められるようになることで、患者さんの待ち時間の軽減にも有効です。
医療が崩壊する事態を防げる
地域連携室を設置し、大小問わず地域のさまざまな医療機関と連携を行えば、1カ所の病院に患者さんが殺到する事態も防げます。規模の大きな1つの病院だけに患者さんが集まってしまうと、医療崩壊につながる可能性も否めません。
規模の大きな病院を受診する患者さんの中には、クリニックで診療する方が適している場合もあります。患者さんに自身の状態に合う適切な医療機関に受診してもらうことで、病院とクリニック双方にメリットがあります。
なお、医療機関によっては、地域の他の医療機関や介護施設、福祉サービスなどと連携が密になることで、患者さんが増加する場合もあるでしょう。この場合は、患者さんが増える事態に備えて円滑な運営ができるように施策を考える必要があります。
地域連携室を正しく機能させて、医療機関同士が患者さんの情報を共有し、各患者さんにとって適切な医療機関に導ける仕組みづくりが重要です。
医療機器の共同利用などがしやすくなる
地域連携室は、外部との連携における統括窓口の役割を果たします。病院にこうした窓口を設置することで、医療機関同士でCTやMRIなどの高額医療機器を共同利用しやすくなります。
日本はCTやMRIの所有台数は多いものの、その地域差が大きい点が課題です。こうした現状もあり、政府は地域連携システムを使用した高額医療機器の共同利用を推進しています。
条件を満たせば地域連携に関わる加算を算定できる
地域連携診療計画加算をはじめ、他の医療機関や介護・福祉施設と連携を行い、条件を満たすことで算定できる報酬があります。報酬ごとに条件は異なりますが、加算が増えることは病院の収益にも関わる重要な問題です。
自院に地域連携室を設置し、報酬を適切に算定することで、将来的に経営状況の安定化につなげていけるでしょう。
地域連携室は自院と地域の医療機関・他施設をつなぐ窓口
地域連携室は、地域の他の医療機関や他施設との連携を目的とした病院内の専門部署です。地域連携室があることで他院や福祉施設などとの連携が強化され、患者さんは地域内の医療機関や施設で、症状に応じた適切な治療を一貫して受けられるようになります。また、CTやMRIのような高額医療機器が共同利用できたり、患者さんを適切な医療機関に分散できたりと、病院・クリニックにもメリットがあります。
地域連携室を設置するには、地域連携室を運営する人材が必要です。ソラストでは、医事関連受託サービスや医療機関経営支援サービスなど、病院経営者さまをサポートするサービスを展開しています。地域連携室における業務もサポートいたしますので、ぜひお問い合わせください。