地域医療連携とは?メリットや課題を病院経営者と開業医の視点から解説
地域医療連携とは、医療機関同士が連携し、それぞれの役割に応じた医療を提供するための仕組みです。地域医療連携により、患者さんが適切な専門医や医療機関に振り分けられることで、切れ目のない医療サービスが受けられます。今回は、地域医療連携について、取り組みや推進するメリット、課題やデメリットなどを解説するので、医療関係者の方はぜひ参考にしてください。
地域医療連携とは?
地域医療連携とは、地域の医療機関が機能を分担し、医療機関同士で連携しながらそれぞれの役割に応じた医療を患者さんに提供するネットワークのことです。医療を必要とする人へ適切なサービスを提供することを目的に、地域医療連携が推進されています。
地域医療連携が確立できていれば、患者さんは急性期から慢性期までの医療をお住まいの地域で継続的に受けられ、その後も必要に応じて在宅での療養が継続可能です。住み慣れた地域で家族と離れることなく、適切な治療を継続できます。
地域医療連携の根幹にある「地域医療構想」
地域医療連携は、地域医療構想を実現するための取り組みの1つです。地域医療構想とは、将来の人口構造や医療需要の変化に備え、医療機関の機能分化や連携を進め、良質で適切な医療が提供できる体制を整えるための考えをいいます。
地域医療構想が必要とされる背景には、高齢化社会の進展や慢性疾患の増加があります。患者さんの医療ニーズが多様化する現代では、複数の専門家が連携して対応できる環境が必要です。
地域医療構想では、医療を必要とするすべての人が平等に診療・治療を受けられるよう、かかりつけ医となる地域医療機関と、大学病院や救急病院などの地域の中核的な病院の連携を強化しています。
地域医療構想の取り組みは、各都道府県・地域が実情を踏まえて主体的に進めることが求められています。
地域医療連携の推進に向けた取り組み
地域医療連携の推進に向けて、どのような取り組みが行われているのでしょうか。ここでは、地域医療連携の推進に向けた3つの取り組みを具体的にみていきます。
地域医療連携推進法人制度
地域医療連携推進法人制度は、地域で良質かつ適切な医療を効率的に提供するため、病院等に係る業務の連携を推進するための方針「医療連携方針」を定め、医療連携推進業務を行う一般社団法人を都道府県知事が認定する制度です。
医療の質を向上させつつ、地域全体の健康を支えることを目的としています。地域医療連携推進法人制度があることで、地域における医療資源の共有や患者さんの情報管理が効率的に行えるようになります。
医療機関の機能分化
医療機関の機能を分化し、それぞれの役割に応じた医療を提供する体制の構築が求められています。病院は、大きく「一般病院」「特定機能病院」「地域医療支援病院」に分けられ、その中で急性期医療や慢性期医療などそれぞれの役割を担います。
また、診療所の主な役割は「かかりつけ医」です。患者さんが日常的な健康管理を行う際に信頼できる医師がいる医療機関を「かかりつけ医」と呼び、かかりつけ医を持つことが推奨されています。
紹介と逆紹介
紹介と逆紹介は、患者さんが適切な医療を受けるために重要なプロセスです。紹介は、かかりつけ医から病院の専門医に患者さんを送ることをいいます。一方、逆紹介は、病院の専門医が治療の経過をみて、患者さんをかかりつけ医に戻すことです。
紹介と逆紹介の仕組みを整えることで、患者さんは必要な専門的治療を受けつつ、回復後はかかりつけ医のもとで継続的な健康管理が行えるようになります。
地域医療連携を推進する3つのメリット
少子高齢化の進展や医療現場の人手が不足する現代において、地域医療連携の確立は不可欠です。ここでは、地域医療連携を推進する3つのメリットをみていきます。
効率的で質の高い医療提供ができる
病院経営者へのメリット | 自院の専門性を必要とする患者さんに医療を提供できる |
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開業医へのメリット | 患者さんの身近な存在として、日常的な医療を提供できる |
地域医療連携の推進によって、医療機関間での横断的な情報共有がスムーズに行えるようになり、患者さんに対して一貫した治療の提供が可能となります。
患者さんの情報が共有されることで、重複した検査や治療を避け、効率的に質の高い医療が提供できるようになるでしょう。
また、医療資源の有効活用にもつながり、人手不足が深刻化する医療現場において、限られたリソースを最大限に活かせます。
患者さんの紹介・逆紹介をスムーズに行える
病院経営者へのメリット | 状態が安定した患者さんを、かかりつけ医や地域の診療所へ円滑に逆紹介できる |
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開業医へのメリット | 日頃の診療を行ったうえで、必要な場合のみ病院への紹介を行える |
地域医療連携が進むことで、患者さんの紹介や逆紹介がより円滑に行えるようになります。適切なタイミングで専門医や治療が行える医療機関に紹介でき、患者さんの病状に応じて必要な医療が提供できるでしょう。
地域医療連携によって、特定の医療機関に患者さんが集中することなく、医療資源を適切に活用できる環境が整い、必要な人に必要な医療が提供できます。
医師やスタッフの業務負担軽減につながる
病院経営者へのメリット | 患者さんの診療情報や検査データ等をスムーズに共有でき、業務工数を削減できる | 開業医へのメリット |
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地域医療連携は、医療従事者にとっても業務負担が軽減できるといったメリットがあります。紙ベースの記録や手続きが減少し、かつ情報共有が効率化されることで、医師やスタッフは患者さんのケアに専念できる時間が増えるでしょう。
地域医療連携の推進とともに業務効率化を図ることができ、医療従事者が働きやすい環境の整備につながります。
地域医療連携を推進するうえでの課題・デメリット
地域医療連携を推進することの必要性は高く、さまざまなメリットがある一方で、課題やデメリットも存在します。地域医療連携を推進するうえで、課題やデメリットについても押さえておきましょう。
医療資源の地域偏在がある
病院経営者への課題 | ・近隣に同じ専門領域の病院がない場合、患者さんが集中する可能性がある |
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開業医への課題 | ・診療所が少ない地域の場合、かかりつけ医としての機能が手一杯になる可能性がある ・紹介先の医療機関が遠方の場合、紹介が難しいケースもある |
医療資源は地域によってどうしても偏りがあります。都市部では医療機関が集中する一方、地域では医師や看護師の不足が深刻です。この不均衡により、患者さんが必要な医療を受けるために長距離を移動する必要が出てくるなどの問題も発生しています。
地域間で医療資源に偏りがあってはスムーズに必要な医療を提供することは難しいため、地域間での医療資源のバランスをとることが連携の強化における重要な課題といえます。
医療機関の機能分担が明確でない
病院経営者への課題 | 機能分担や病院・診療所の内情が見えにくいことで、紹介・逆紹介が滞る可能性もある | 開業医への課題 |
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医療機関ごとの役割分担が不明確なケースもあります。各医療機関がどのような役割を果たすべきか、その機能分担が明確でないと、患者さんの紹介・逆紹介がスムーズにいかないケースも出てきてしまうでしょう。
効率的で質の高い医療を切れ目なく提供するためにも、医療機関の機能の明確化や機能分担を行うことが求められます。
システムの導入や活用が遅れている
病院経営者への課題 | ・DXの推進が遅れている診療所等との情報共有が難しい |
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開業医への課題 | ・DX推進の状況によっては病院と円滑な連携ができない ・ICTの活用・システムの導入に費用がかかる |
地域医療連携を効果的に進めるには、情報共有システムの導入と活用が不可欠です。医療機関によっては、ICTの活用やシステムの導入が遅れているケースも少なくありません。情報共有がスムーズに行われないと、医療機関間の連携が滞ってしまうでしょう。
地域医療連携を推進するには、ICT活用やDX推進により、効率的な情報共有を実現することが重要です。
地域医療連携推進に向けて病院経営者・開業医に求められること
地域医療連携の推進に向けて、病院経営者や開業医は主体的に取り組んでいく必要があります。まずは、下記の3つのポイントに取り組むことが地域医療連携推進の第一歩といえるでしょう。
地域で必要とされる医療需要を把握する
地域医療連携を推進するには、その地域における医療需要の把握が欠かせません。まずは、地域で求められる医療ニーズを正しく把握し、各医療機関の役割を明確にし、分担を進める必要があります。
現在のニーズだけでなく、将来の医療需要も予測したうえで、必要な医療ニーズを満たせるよう計画的に準備を進めておくことが大切です。
「かかりつけ医」として地域の患者さんの健康を支える
診療所は「かかりつけ医」としての機能を高めることが求められます。まずは、患者さんが安心して健康の相談ができる環境を整備し、必要に応じて地域の中核病院を紹介するなど、状況に応じた対応ができる体制を整えましょう。
単に診療にきた患者さんを支えるだけでなく、健康診断や地域保健など、地域における社会的活動や行政活動に積極的に参加し、地域住民と信頼関係を築くことも大切です。
システムの導入を進めて近隣医療機関との連携を強化する
地域医療連携を円滑に進めるには、情報共有を効率化するシステムの導入が不可欠です。電子カルテや地域医療ネットワークシステムを活用することで、患者さんの情報共有が迅速に行え、医療の質の向上にもつながります。
多職種間の連携が求められる現場では、システムの導入・整備が業務効率化にも寄与します。システムの導入により、今後より重要性が高まっていく地域医療連携を進めることができるでしょう。
地域医療連携に向けて自院の役割の明確化とシステムの導入・整備を進めよう
地域医療連携は、患者さんが住み慣れた地域で治療を継続することが可能となり、医療機関は質の高い医療の提供や業務効率化が可能です。地域医療連携を進めるには、自院の機能を明確化にすることや、効率的な情報共有を実現するシステムの導入と整備が求められます。
地域医療連携を推進するうえでは、さまざまな課題がみえてくるでしょう。病院経営の課題解決に悩んだ場合には、ソラストの医療機関経営支援サービスがおすすめです。
医事業務受託で蓄積した業務運営の経験をもとに、病院経営における改善機会の抽出と課題解決に取り組みます。お悩みの病院経営者さまや開業医さまは、ぜひ一度ご相談ください。