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開業医の廃業率は?経営難に陥る理由と回復を目指す方法

公開日/2024.06.30 更新日/2024年7月9日
開業医の廃業率は?経営難に陥る理由と回復を目指す方法

開業医として経営を存続させるには、「廃業率」や廃業のリスクも知っておきたいポイントです。志高く開業した場合でも、経営難に陥り廃業してしまうクリニックは少なくありません。本記事では、日本における開業医の廃業率や廃業に追い込まれる理由に加え、経営難の際に脱却する対策について解説します。

開業医の廃業率はどのくらい?

一般診療所の施設数について

医療・福祉の廃業率 全産業の廃業率の平均
2.3% 3.3%

出典:中小企業庁 2024年版「小規模企業白書」全文<第2-2-25図>開業率と廃業率(業種別)

中小企業庁の調査によると、全産業の廃業率の平均が3.3%であるのに対し、医療・福祉業界の廃業率は2.3%という結果でした。医療・福祉業界の合計の調査結果ではあるものの、開業医の廃業率は一般企業の廃業率に比べるとそれほど高くありません。

令和4年 令和3年 増減の差
一般診療所の施設総数 105,182 104,292 +890
うち、有床診療所の施設数 5,958 6,169 -211
うち、無床診療所の施設数 99,224 98,123 +1,101
1年間で開設・再開した一般診療所の総数 +8,171
1年間で廃止・休止した一般診療所の総数 -7,281

参考:厚生労働省「令和4(2022)年医療施設(動態)調査・病院報告の概況 」

また、厚生労働省の調査によると、令和4年における一般診療所の総数は前年比で増加しています。しかし、令和3年からの1年間で廃止・休止した一般診療所の総数は7,281も存在。ベッド数が19以下の比較的小規模な医療機関である有床診療所の数も減っており、地域における医療提供体制に変化が生じている可能性を考えられるでしょう。

開業医の廃業率が高いわけではないものの、一部の診療所が経営難に追い込まれている実情がうかがえます。

開業医が廃業に追い込まれる6つの理由

開業医が廃業に追い込まれる6つの理由

開業医が廃業に追い込まれてしまう理由として、後継者や資金繰りの問題、集患・周知不足などさまざまな原因が考えられます。開業医が廃業する主な理由を6つ見ていきましょう。

高齢化により後継者がいないから

クリニックの院長の高齢化が進み、後継者がいないことで廃業に追い込まれるケースがあります。地方や過疎地、離島では後継者不足がすでに深刻化しています。厚生労働省の「令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況 」によると、診療所で勤務する医師の平均年齢は60.4歳と比較的高齢です。

後継者が見つからない場合、最終的には廃業を余儀なくされます。結果、地域の医療を担う医師が不足し、社会全体に大きな影響をおよぼすでしょう。

資金繰りが悪化して経営難に陥ったから

資金繰りが悪化すると経営が困難になり、最悪の場合廃業に至ることがあります。開業してクリニックを運営するには、医療機器の設備投資が必要です。しかし、院内の設備を充実させても、患者数の見込みを誤れば安定した収入を得られず、投資の回収ができなくなります。

また、患者さんの数の減少や保険制度の変更などによって収入が不安定になると、資金繰りの悪化につながる場合もあるでしょう。たとえ黒字であっても、経費などの支払いが間に合わなくなり、倒産をするケースもあります。

集患・地域への周知がうまくいかないから

開業医としてクリニックを経営するには、医学だけでなく集患のためのマーケティングや広報の知識が必要です。集患に対するノウハウがない、予算が十分に割けないなどの理由から、適切な広報活動ができない場合、地域での認知度低下を招きます。

また、集患のためには、自院の得意・特徴を前面に押し出したり、口コミや地域ネットワークを活用して地域住民との信頼関係を築いたりすることも重要です。

医師としてのコミュニケーションスキルや経営の知識が不足しているから

医師としてコミュニケーションスキルが足りない場合、患者さんからの信頼を得られず、経営難に陥る可能性があります。患者さんは診察や治療の効果だけでなく、医師の対応にも注目しているため、丁寧で相手に寄り添うコミュニケーションが必要です。

また、病院勤務の医師とは異なり、開業医は経営に関する知識・技術の習得も欠かせません。経営の知識不足は働くスタッフからの信頼を損ない、経営の安定性を失います。

人間関係の問題で人手が不足したから

院内の人間関係が悪化するとスタッフの退職を招き、人手不足を発生させる原因につながります。良好な人間関係が築けないことでコミュニケーション不足が起こり、医療の質や患者さんへの対応にも悪影響をおよぼすでしょう。

また、人手不足を補うために新規で人を採用するとなると、人材募集や新しいスタッフの育成コストも発生。必要なコストが増加し、経営難に陥る可能性が高まります。

取り巻く状況や周辺環境が変化したから

大型病院の開業や地域の過疎化、医療政策の変更なども開業医の経営に直接的な影響を与えます。目まぐるしく変化する情勢に対応するには、情報収集能力や経営戦略の見直しなどが必要です。

昨今では、IT技術の発展に伴い医療についても大きな進化が起きています。安定した経営を行うのであれば、デジタル技術に関する知識も必要不可欠な要素の一つです。

開業医が廃業を回避する7つの対策

開業医が廃業を回避する7つの対策

開業医が廃業に追い込まれる理由がわかったところで、廃業を回避するための対策について紹介します。開業医として経営を存続するために、できることから対策を進めましょう。

早い段階で後継者を見つける

後継者の有無は開業医の将来を大きく左右する重要な要素です。できるだけ早い段階から準備を進めましょう。早期に適切な後継者を見つけ、計画的かつスムーズな引き継ぎを行うことで、クリニックの安定した経営と成長につながります。

また、後継者が身内や近親者から見つからない場合も考慮しましょう。その際には、第三者から適任者を見つける選択肢も視野に入れ、広く候補者を探すことが重要です。

経営に関わる知識を身につける

廃業を回避してクリニックの運営を継続するために、開業医は経営に関わる知識を身につけることも欠かせません。収益と支出を正しく把握してバランスを取り、計画的な予算管理や効率的な人員配置を行いましょう。

また、数年に一度は経営計画を見直し、クリニックの財務状況や運営方針の再評価を行うことも大切です。再考の際には、地域の医療ニーズの変化や競合状況の分析も合わせて行います。

マーケティングスキルを高める

開業医として地域住民に選ばれるクリニックになるためには、他のクリニックとの差別化を図ることが重要です。ターゲットの患者層を明確にして、患者さんのニーズに応じた医療サービスを提供しましょう。

デジタルマーケティングの手法を取り入れることで、低予算かつ広範囲のターゲットに自院を周知できます。広告だけでなくSNSやWebサイトを活用し、地域コミュニティとの関係を築くことも大切です。

リスク管理を徹底する

開業医の経営にはさまざまなリスクが存在するため、潜在的な問題や危機を予測し、事前に対策を講じることが大切です。患者さんが減った場合にはどう集患するか、収支状況が悪化した際はどんな対応が必要であるか、幅広いリスクに備えましょう。

スタッフの教育体制を整える

患者さんからの支持を獲得するためには、提供する医療の質が大変重要です。定期的な研修や勉強会を開催し、スタッフの知識と技術の向上をサポートしてください。

また、キャリアパスを明確にし、個々の成長を促す環境を用意することでモチベーションアップにもつながります。ときには外部の専門家を招いて研修やセミナーを行うなども、新たな刺激となり効果的です。

スタッフと良好な関係を築く

経営者である開業医とスタッフの間には、距離が生じることもあります。良好な職場環境をつくるために、丁寧にコミュニケーションを取り、スタッフの意見や要望を把握しましょう。従業員の満足度を上げることで離職を防ぎ、よい経営につながります。

また、経営者目線では気づきにくい現場の問題点や課題もあるため、スタッフとのコミュニケーションを通じて早期に発見することも可能です。

専門家のサポートを受ける

自分たちだけでは解決できない経営の問題に直面した際は、経営コンサルタントや税理士、弁護士などの専門家のアドバイスを受けることも効果的です。専門家のネットワークを活用することで最新の情報やトレンドの把握、第三者目線で客観的な意見を得られます。開業医が自身の負担を軽減でき、医療業務に集中できる環境を整えられるでしょう。

成功する開業医の特徴とは

中には、地域住民からの信頼を得て安定した経営をしている開業医も数多く存在しています。ここでは、成功している開業医の傾向を分析し、共通する特徴を紹介します。

集患がしやすい立地にある

着実に集患が見込める地域で開業している医師は、経営に成功しやすい特徴があります。交通の便がよくアクセスしやすい場所にクリニックを構えると、集患のハードルが下がるでしょう。

地域の特性を考え、車を利用する人が多いエリアであれば、駐車スペースも用意しておきます。これから開業する医師は、自院で提供する医療サービスを求める患者さんが多い地域を選び、クリニックを設立しましょう。

経営やマーケティングの知識があり集患できている

経営やマーケティングの知識が豊富な開業医も、集患に苦戦することが少ない傾向にあります。資金繰りやコスト管理を徹底し、マーケティング予算を捻出するなど工夫を凝らしています。

また、金銭面で余裕ができることで、高品質な医療機器の導入が可能に。質の高い医療サービスを提供することで患者さんの信頼を得られ、リピーターの増加にもつながります。

職場の風通しがよく人材が充実している

成功する開業医は、スタッフが働きやすい環境を整備できています。人間関係の問題がなく風通しのよい職場では、スタッフの士気が高まり人材の定着率が向上。問題が発生した際も迅速に解決策を見つけられるため、業務の効率化が可能です。

また、スタッフの明るい雰囲気は、患者さんに対しても伝わります。結果としてサービスの質が向上し、クリニック全体の経営にプラスの影響を与えるでしょう。

新しい医療設備が整備されている

最新の医療機器や診断技術を導入することで、より正確な診断や効果的な治療が可能です。患者さんに高品質の医療サービスを提供でき、患者満足度の向上につながります。

また、最新の医療技術の導入は、医師やスタッフの働きやすさにも直結し、業務効率の向上にも貢献。患者さんのニーズは多様化しているため、クリニック内の設備を充実させることはよい評判を集める要因の一つです。

開業医をサポート!ソラストの医療機関経営支援サービス

開業医をサポート!ソラストの医療機関経営支援サービス

開業医が本来の診療業務のかたわら、経営やマーケティングを実施することは非常に大変です。診療業務と経営管理の両立は、時間的にも精神的にも負担が大きく、結果として診療の質や経営に悪影響をおよぼす可能性があります。

そんなときは、開業医や病院の経営者を支えるソラストの「病院経営支援サービス」の利用がおすすめです。さまざまな医療機関をサポートしてきた実績をもとに、開業医の皆様が抱える経営課題の解決に貢献します。また、ITの導入支援や働き方改革に向けたサポートも実施中です。

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開業医の廃業や経営に関するQ&A

最後に、開業医の廃業や経営に関するよくある質問をQ&Aの形式で解説します。

Q.地域の開業医が廃業するとどんな影響がある?

A.患者さんにとって自宅から通える病院がなくなり、医療難民があらわれてしまいます。

開業医が廃業すると、その医療機関を頼りにしていた患者さんたちは行き場を失ってしまいます。とくに地方都市や離島など代わりとなる医療機関が少ない地域では、この問題は一層深刻です。

また、働いていたスタッフの雇用も失われ、地域経済にも悪影響をおよぼします。医療サービスの不足と雇用喪失は、住民の健康と生活の質を著しく低下させる大きな問題です。

【地域の開業医の廃業がおよぼす影響】

・かかりつけ医がなくなり、医療サービスを受けられない人があらわれる ・雇用が失われ、地域経済に影響を与える ・慢性疾患など医療依存度の高い住民の生活の質が落ちる

Q.開業医が廃業に追い込まれる前兆はある?

A.患者さんの数の減少や不安定な収入、スタッフの離職が増えるといった共通の前兆が見られます。

開業医が廃業する前兆として、集患ができなくなる、スタッフの離職が増えるといった事態が見られることが多いです。地域社会からの評価が低下した状態が続く場合も、廃業に追い込まれる可能性が高いでしょう。

廃業の前兆がある場合は、早急に解決策を講じる必要があります。問題が長期化すると資金繰りが厳しくなり、医療機器や設備が老朽化した際に修繕や購入の費用を捻出できません。結果として医療の質が低下する悪循環に陥ります。

【開業医が廃業に追い込まれる前兆】

・患者さんの数が減っている ・スタッフの離職率が高い ・病院の悪い口コミや評判が多い

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Q.医師が開業するときに意識しておくべきことは?

A.医療知識だけでなく、経営やマーケティングなど幅広い知識を持つことが大切です。

開業医として成功するには、自院のサービスに適した立地の選定や経営計画の立案、マーケティングスキルなど医療に関する知識以外も幅広く求められます。地域における認知度の向上や、患者さんとの信頼関係の構築も必須です。常にリスク管理を怠らず、予期せぬ事態に備えるための保険やリスクヘッジの考え方も身につけておきましょう。

開業医であれば、廃業しないためのリスクヘッジが重要

開業医の廃業率や廃業に追い込まれる理由、回避する対策について解説しました。クリニック経営は、時代や社会の変化に合わせて柔軟に行う必要があります。廃業を防ぐために、医療知識だけではなく経営・マーケティングなど幅広い知識を身につけましょう。また、成功する開業医の特徴も頭の片隅に入れておくと困ったときに役に立ちます。

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