介護職員として働くうえでメインとなる3つの資格
利用者に対して身体介護や生活援助を行うことを主たる業務とする介護職員※1。利用者の生活を支援する専門職であり、その保有資格はさまざまですが、医師や看護師、薬剤師などとは異なり、“特定の資格がなければ介護職員として働けない”、というわけではありません。
一般的に介護職員の資格としては、「介護職員初任者研修」「介護福祉士実務者研修(実務者研修)」「介護福祉士」が一般的に挙げられます。以前は、「訪問介護員養成研修1~3級課程(通称ホームヘルパー)」と「介護職員基礎研修」がありましたが、これらは初任者研修と実務者研修に変更されています。
さて、この3つの資格の学ぶ内容や役割には、どのような違いがあるのでしょうか。
<初任者研修>
訪問、在宅における介護職員として、基本となる知識・技術を身に付けます。
<実務者研修>
初任者研修の内容をより深く学習し、たんの吸引等の医療的ケアを学びます。さらに、実地研修を修了することで、たんの吸引等医療的ケアを実施できるようになります。また、実務者研修修了者は訪問介護計画などを作成する「サービス提供責任者」にもなれるほか、介護福祉士の受験資格を得ることができます。
<介護福祉士>
初任者・実務者研修で学ぶ内容をさらに広範囲に時間をかけて学習します。高度な技術と専門知識を有する介護の実践者として、指導者としての役割や、介護職チーム内のサービスをマネジメントする役割なども求められます。介護の専門職としての上位資格であり、多職種連携のなかで、利用者により適切な介護を提供する力を身に付けます。
また、介護の人材確保のすそ野を広げる目的で、2018年から「生活援助従事者研修」と「介護に関する入門的研修(入門的研修)」も始まっています。生活援助従事者研修は、訪問介護で家事中心のサービスを行うための知識・技術を習得するものです。修了者は身体介護以外の訪問介護員として従事できます。入門的研修は介護の未経験者が、介護に関する基本的な知識を習得するものです。
「認知症介護基礎研修」の受講が義務付けされる
これまでは一部のサービスを除いて、介護福祉士や初任者研修など、介護・福祉にかかわる資格がない人(無資格者と呼びます)でも介護職員として働くことができました。しかし、2021年度の介護報酬改定により、そうした介護職員については「認知症介護基礎研修」の受講が義務付けられました(3年間の猶予期間および研修の種類により免除あり)。
認知症介護基礎研修受講の義務付けの背景には、「認知症についての理解の下、本人主体の介護を行い、認知症の人の尊厳の保障を実現するという観点から、すべての介護にかかわる人に認知症の理解促進が必要である」という国の方向性があります。
認知症介護基礎研修では、認知症介護に携わる人が業務を行う上で必要とされる、基礎的な知識・技術とそれを実践する際の考え方を身に付けられるようになっています。初任者研修などと同様に国により規定された研修科目を修了することにより資格認定されます。カリキュラムは講義と演習の6時間で、以下の内容となっています。
講義:認知症の人の理解と対応の基本
内容:認知症の人を取り巻く現状、症状に関する基礎的な知識を学び、認知症ケアの基礎的な技術に関する知識を身に付ける。
演習:認知症ケアの実践上の留意点
目的:認知症ケアの実践を行うために必要な方法について、事例演習を通じて、背景や具体的な根拠を把握したうえで、ケアやコミュニケーションの内容を検討する。また、自事業所の状況や自身のこれまでのケアを振り返り、認知症の人への対応方法を身に付ける。
この研修は都道府県が実施主体となって実施しており、介護事業所を通じて申し込むことができます。
こうした資格取得は介護サービスの質向上に資することになり、利用者に安心して介護サービスを利用してもらうことにつながります。
(提供:株式会社日本医療企画)
以上
※1
各介護サービスにおいて、人員配置基準で「介護職員」としてカウントされる人員のことを示す。
※2
義務付けが免除される資格
看護師、准看護師、介護福祉士、介護支援専門員、実務者研修修了者、初任者研修修了者、生活援助従事者研修修了者、介護職員基礎研修課程修了者、訪問介護員養成研修1級課程・2級課程修了者、社会福祉士、医師、歯科医師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、精神保健福祉士、管理栄養士、栄養士、あん摩マッサージ師、はり師、きゅう師