業務の負担軽減や受付の時短など
患者と医療機関の双方にメリットが!
2017年10月に始まったマイナンバー制度では、住民票を有するすべての人に対して1人1つの12桁の番号(マイナンバー)が通知されています。顔写真付きのマイナンバーカードも交付されており、今年7月には、マイナポイントも始まり、徐々に使用頻度も高まっています。
2021年3月からは、マイナンバーカードは健康保険証としても利用できるようになります。これにより、医療機関を受診した際は、マイナンバーカードをカードリーダーにかざすだけで受付が済むようになり、保険証を持ち歩く必要がなくなります。2023年3月末までに、概ねすべての医療機関・薬局で利用できることが目指されています。
マイナンバーカードが健康保険証になることで、患者・医療機関ともにメリットがあります。まずは、患者側の視点から考えると、次のようなポイントがあります。
① カードリーダーにかざすだけなので、医療機関の受付での待ち時間が短縮される
② 就職や転職、引っ越しの際も、保険証の切り替えを待たずに受診ができる
③ マイナポータルから、特定健診情報や薬剤情報・医療費が見られる
④ 確定申告時に、領収書がなくても医療費控除の確認が簡便になる
⑤ 高額療養費制度を使う際に、限度額適用認定証などの書類の持参が不要になる
③に関してもう少し詳しく説明すると、2021年3月(予定)からは自身の特定健診の情報を、同10月からは薬剤情報をマイナポータルで確認できるようになります。これにより、自身がどのような薬を服用していたのかがわかるだけでなく、患者自身の同意のうえで医師や薬剤師などの有資格者が診察や投薬をする際に、過去の薬剤情報などを確認することができ、適正な治療・投薬につなげることができます。
医療機関のメリットは次の通りです。
① 資格確認(加入している医療保険の確認)がすぐにできるようになり、受付業務が効率化される
② 資格過誤によるレセプトの返戻が減る
③ 健康保険証の情報入力の手間が減るなど、事務コストが削減される
④ 薬剤情報や特定検診情報が閲覧でき、適切な治療・投薬などにつなげられる
健康保険証の資格確認がスムーズに進むことで、医療機関や薬局の受付業務が効率的になります。また、医療保険の請求の誤りや未収金が減少し、保険者等の事務処理コストの削減が期待できます。薬剤や特定健診の情報から、患者に合った治療や処方もしやすくなります。
なお、健康保険証として利用する場合でも、受診歴や薬剤情報などの情報がマイナンバーカードのICチップに記録されることはありません。図表1にあるように、医療機関や薬局は顔認証や暗証番号で本人確認をしたうえで、社会保険診療報酬支払基金・国民健康保険中央会にあるオンライン資格確認等システムで患者の資格情報を取得・取り込む仕組みになっているからです。支払基金や国保中央会が診療・投薬情報を閲覧することもなく、プライバシーにも配慮されています。