月間1,000人超の外国人患者を受けて入れている病院も
厚生労働省が実施した「令和4年度医療機関における外国人患者受入に係る実態調査について」によると、22年9月の一か月間で、回答した病院のほぼ半数にあたる2,575施設が外国人患者を受け入れたことがありました。
病院ごとの一カ月間の「外国人患者数を見ると、10人以下」が最も多く989施設、次いで「11~50人」が746施設あり、外国人患者は決して珍しくないことが分かります。中には「1,000人超」もの外国人患者を受け入れている病院も17施設ありました。
未収金トラブルへの対応も課題に
日本の医療機関を受診した多くの外国人患者は「医師と話す際に言葉が通じない」、「自分の症状を説明できない」といった言葉の問題に不安を抱えています。このため、外国人患者の言語サポートの一環として、医療通訳者の配置、電話通訳の手配及びタブレット・スマートフォンなどの機械翻訳機を配置する医療機関も増えています。
しかし、課題はコミュニケーションだけではありません。日本と海外の医療制度の違いがトラブルの原因になることがあります。代表的なのが診察、治療などを受けたのに医療費が支払われない問題です。厚労省の実態調査によると、約2割の病院で外国人患者による未収金を経験し、病院あたりの未収金総額の平均は21万3000円でした。
外国人旅行者は、日本の国民皆保険制度の対象外となるため、海外旅行保険などに加入しているかどうかを確認する必要があります。さらに、海外旅行保険でも、現地で医療費を全額支払った後に保険会社に請求するものや、医療アシスタンス会社が支払うものなどさまざまなものがあり、注意が必要です。
実践的な厚労省マニュアル
外国人患者の受入体制の整備推進は国家戦略として進められてきました。例えば、医療滞在ビザや「外国人患者受入れ医療機関認証制度(JMIP)」の創設です。ホームページに英語および医療機関が必要と判断した外国語で情報を記載しているなどの条件があり、23年7月末現在、66の医療機関が認証を受けています。
また、厚生労働省は「外国人患者の受入れのための医療機関マニュアル」をホームページで公開しています。①受付、②検査・診察・治療、③入院・退院、④診断書の作成・交付、⑤医療費の請求・支払い、⑥処方箋の発行――といった場面ごとに対応ポイントを説明。「情報収集」「説明」「同意」の徹底がトラブルを防ぐために重要だと指摘しています。
マニュアルには、外国人患者対応で困った時に相談できる「お役立ち情報サイト」も掲載されており、外国人患者の対応をする医療従事者にとって実用的です。このほか、厚労省のホームページには問診票、入院申込書、誓約書といった50種類ほどの関連文書が多言語で用意されており、各病院でダウンロードできるようになっています。言葉の壁の克服するうえで手助けになるでしょう。
今後も医療機関に来院する外国人は増えていくことが予想されます。外国人患者の来院数、どの言語を母国語としている患者が多いかなど現状の把握が受け入れ体制整備の第一歩となります。日本との生活習慣や文化の違いについても日頃から理解を深めることも大切です。