労働環境の改善に取り組む看護協会
働き方改革により時間外労働に上限が定められ、看護師も原則として月45時間、年間360時間以内に抑えなければなりません。有給休暇の取得も義務化され、たとえば、年10日以上の有給休暇が付与される人は、年間5日以上の有給休暇の取得が義務付けられています。さらに、労働時間を正確に把握するため、ICカードやタイムカードなどを利用する必要があります。
日本看護協会は看護職の労働環境の改善に向け、さまざまな取り組みを行っています。看護における働き方改革の目標を「働き続けられる仕組みを創る。その仕組みは実現可能で、持続可能な仕組みであること、看護師が生涯にわたって、安心して働き続けられる環境づくりを構築し推進する」と定めました。
目標達成に向けて策定したのが「就業継続が可能な看護職の働き方の提案」です。病院などにおける看護実態調査の結果を踏まえ、看護職の就業継続が可能な働き方に関連する基本的な5つの要因(①夜勤負担、②時間外労働、③暴力・ハラスメント、④仕事のコントロール感、⑤評価と処遇)と、10項目の改善案が示されています。
仕事のコントロール感を持つことがやりがいにつながる
この中で注目されるのは「仕事のコントロール感」です。日本看護協会は仕事のコントロール感について、「組織の中で個人の能力に応じて任せられた仕事について、自分のペースで行い、その順番・やり方を自分で決め、職場の仕事の方針に自分の意見を反映できること」と定義しています。
言い換えれば、仕事について見通しを持ち、段取りや進め方について自分なりに工夫しながら調整できるということです。仕事のコントロール感を持つことによって、看護ケアに使う時間が確保され、看護職のやりがい等に良い影響を与えることができると期待されています。
また、5つの要因とその対応策は、それぞれが独立しているものではなく、互いに関係しあっています。この提案を実現していくため、組織や管理職が行うマネジメントだけでなく、職員とともに話し合い、互いの意見を尊重しながら、取り組んでいくことが大切だと同協会は指摘しています。
働く人、雇用する側の意識改革が大切
少子高齢社会の進展に伴い、看護職として就業する若年層の大幅な増加は見込めません。人手不足の問題を解決するためにも、働き方改革の意識を広く浸透させる必要があります。安心・安全な看護提供体制を継続するには、看護職ができるだけ長く働き続けられる持続可能な働き方の実現が不可欠だからです。
雇用する側だけでなく、看護師自身が働き方改革の必要性や理想のワークライフバランスを実現する意識を持つことも大切です。働きやすい職場環境づくりに向け、働く人と雇用する側の双方が協力することによって、医療界における真の働き方変革の実現に近付くことができます。