国際基準に沿った手法のもとで日常の食事作りを行う
HACCP(ハサップ:Hazard Analysis and Critical Control Pointの略)とは、食品衛生管理の手法の国際基準です。最終製品のみを検査し、安全性を確認するという従来の衛生管理と異なり、食材の搬入時や調理中、配膳のタイミングなどで食中毒菌に汚染されたり、異物などの混入リスクがないかを確認し、リスクを軽減・除去することで、食品の安全性を確保していく手法です。
今年6月から1回につき20食以上食事を提供している介護施設でも、「HACCPに沿った衛生管理」が義務付けられることになりました。HACCPに沿った衛生管理を行っているかどうかの認可や調査などを受ける必要はありませんが、守らなかったときの罰則等は都道府県ごとに定められています。不明な点については施設を管轄する保健所に確認しましょう。
衛生管理計画を策定、計画を実施しきちんとできているかを確認・記録する
すべての介護現場に義務付けられた主なことは、衛生管理をいつ・どのように行い、問題があったときにどのような対処をするのかを「衛生管理計画」として策定し、計画に沿って実施すること、計画に沿っているかどうかを確認・記録することです。つまり、衛生管理を「見える化」していくのです。
ここで言う衛生管理は、5S(整理・整頓・清掃・清潔・習慣)や2S(洗浄・殺菌)の実施と、検食を実施するといった一般衛生管理※1 など、従来行っていた内容が基本になりますので、特別な機器を使って行う必要はありません。
なお、「HACCPに沿った衛生管理」は、施設の規模によって実施する内容が異なります。従業員数が50人以上は「HACCPに基づく衛生管理」、それ以下は「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」となります。都道府県などによって従業員数などの適用が異なることもありますので、確認してください。
2つのパターンでは、以下のものを求められます。
・HACCPに基づく衛生管理:HACCP7原則※2 に基づき、使用する原材料や製造方法等に応じて衛生管理計画を作成する。
・HACCPの考え方を取り入れた衛生管理:各業界団体が作成する手引書を参考に、衛生管理計画を作成する。
介護施設の場合参考になる手引書は「HACCP導入のための手引書」のなかの「大量調理施設編※3」です。また、「大量調理施設衛生管理マニュアル※4」に沿って衛生管理を実施している場合、このマニュアル自体がHACCPに基づいて策定されているので、新たな対応をとる必要はありません。
食事にかかわる衛生管理を意識することは利用者の満足度や介護の質の向上にもつながる
もう少し詳しく、衛生管理のやり方を見ていきます。HACCPでは食中毒菌や石、金属片といった異物など健康に悪影響をもたらすものを「危害要因」と呼び、危害要因を取り除くための重要なポイントを「重要管理点」としています。この危害要因に何があるのか、重要管理点はどこかを衛生管理計画に盛り込んでいきます。
つまり、食事を作り、利用者に提供するまでの工程のどこに危害要因があるのかを分析し、危害要因が発生しないようにするためには何を注意すればいいのかを予測し、重要管理点を連続的・継続的に監視・記録します(図表)。