医療事務の人手不足の原因は?リスクや医療機関経営者がとるべき解決策


医療事務をはじめ、医療現場では深刻な人手不足が大きな課題となっています。なぜ人手不足が問題視されているのか、今回は医療事務にフォーカスして人手不足の原因やリスク、有効な解決策をご紹介します。医療事務の人手不足に悩む開業医・病院経営者の方はぜひ参考にしてください。
医療事務の人手不足の実態
医療現場では、年々人手不足の状況が深刻化しており、医療事務も例外ではありません。厚生労働省の職業情報提供サイトによると、医療事務の有効求人倍率は2倍です。地域によって差はありますが、求人数が多いものの求職者の方が少なく、思うように採用が進んでいない状況であることがうかがえます。
医療事務は資格や経験がない人でも就業できる職種であるため、看護師など専門の医療職に比べると人材を確保しやすいといえます。しかし、それでも常に人手不足の状況にあるのが実情です。
参考:job tag(職業情報提供サイト)「医療事務-職業詳細」
医療事務の人手不足を招く原因
病院やクリニックの医療事務が人手不足に陥る原因として、大きく上記3つが考えられます。一番の問題は、医療業界全体にもいえる離職率の高さ・定着率の低さでしょう。その原因はさまざまですが、常に現場が人手不足でスタッフ一人あたりの負担が大きいことが影響していると考えられます。
医療事務の人手不足の状況を改善するために、人手不足を招いている原因を見極め、適切な解決策を講じることが重要です。
医療事務の人手不足の原因①離職率の高さ・定着率の低さ

ここからは、医療事務の人手不足の原因について、1つずつ詳しくみていきます。
人手不足の状況を生み出してしまっているとくに大きな原因は、離職率の高さや定着率の低さです。その原因として、以下のようなものが考えられます。
・患者さん対応や業務内容に悩みがある
・人間関係など働く環境に悩んでいる
・ライフイベントに合わせて離職する人もいる
・医療技術の高度化・多様化によって高いスキルが求められる
給与や待遇に不満がある
医療事務スタッフが抱える不満の一つに、給与や待遇の問題があります。医療機関の運営のためには、医療職の確保が最優先です。医療事務員の募集・採用・雇用にかけられるコストには限界があるため、医療事務員の給与や待遇を高水準にすることが難しい状況にあります。
医療事務は医療現場に欠かせない存在であるものの、業務の重要性に対して報酬が見合わない、他業種と比較しても賃金が低いと感じてしまい、離職につながるケースは珍しくありません。
賃金の問題が生まれる原因としては、医療機関ならではの特徴があります。インフレや人手不足に直面したとき、一般企業であれば物価や賃金の上昇を、提供する商品やサービスの価格に転嫁して給与を上げることが可能です。しかし、医療機関ではこれができません。一般企業の賃金上昇に追いつくことができず、賃金が低く抑えられてしまう状況に陥ります。
患者さん対応や業務内容に悩みがある
地域のかかりつけ医として機能するクリニックでは、受付や会計、レセプト請求など幅広い業務を少ない医療事務スタッフで対応しなければなりません。ときには患者さんからクレームを受けたり、多くの仕事に追われたりするケースもあるでしょう。
また、病院は分業制としている場合が多く、一人がマルチに動くことは少ないですが、規模が大きい分仕事量も増加します。
クリニックでも病院でも、それぞれの業務の大変さや忙しさから疲労やストレス、悩みが蓄積され、最終的に離職につながってしまうケースもあります。
人間関係など働く環境に悩んでいる
職員同士のコミュニケーション不足があったり、職場の雰囲気が悪かったりすると、仕事へのモチベーションは低下しやすくなります。
とくに小規模なクリニックの場合、スタッフが少ない分人間関係が密になりがちです。限られたコミュニティであるほど、人間関係に問題があると離職につながる可能性が高くなります。
一方、病院の場合は医療事務の人数が多いため人間関係は密になりにくいものの、全員と良好な関係を築くことは難しいでしょう。
医療事務に限らず、職場には相性が合わない人もいます。人間関係の問題を抱えてしまうと徐々に仕事への意欲も失われ、悩みの解決手段として離職を選択してしまうおそれもあります。
ライフイベントに合わせて離職する人もいる
医療事務は主に女性の就業者が多い職種です。結婚や出産などのライフイベントを機に離職する人も一定数いるため、それが離職率の高さにも関係しています。
ライフイベントによる離職は仕方のない部分でもありますが、産休・育休制度や短時間勤務制度を整えたり、ブランクがあっても復帰できる仕組みを構築したりすることで、離職を防ぐ工夫ができるでしょう。
医療技術の高度化・多様化によって高いスキルが求められる
近年、医療技術の高度化や多様化により、医療事務スタッフにも高度なスキルが求められるようになりました。レセプトコンピューターや電子カルテの導入、その他業務効率化に関するさまざまなツールの導入は、その一例です。
いきなり新しいことが増えてしまうと、忙しい中でやり方を覚えるのが難しかったり、今まで通りに業務を進められなかったりするストレスの解決手段として離職を考えてしまうケースもあります。
医療事務の人手不足の原因②外部の要因
現場の労働環境に限らず、上記のように外部の要因が人手不足に関係している場合もあります。原因を詳しくみていきましょう。
労働人口の減少に反して医療ニーズが増加している
少子高齢化の影響で、日本全体での労働人口が減少する一方で、医療ニーズは年々増加しています。サービスの担い手の確保が追いつかないまま、医療サービスを求める人は増加していくため、医療現場での業務量やスタッフ一人あたりの負担が増えてしまっています。
この需要と供給のギャップは、医療事務の人手不足を深刻化させる要因の一つです。
働き方が多様化して他業界に人材が流出している
近年、働き方改革の影響で、労働時間や職場環境に対する意識が変化しています。一般企業の場合は、テレワークやフレックス制など多様な働き方を選択できるケースも多いです。より自分に合う働き方を求め、医療業界から離れてしまうケースも珍しくありません。
病院やクリニックでは、一般企業のようにすぐに職場環境を整備するのは難しいかもしれません。しかし、人材不足を解消するには、医療業界全体で働き方や働きやすさの改善を目指すことが求められます。
感染症の流行などの影響を受けやすい
感染症の流行やその時期の状況により、医療事務の人手不足が加速するケースもあります。とくに、新型コロナウイルスのようなパンデミックが起こった際には、リソースは変わらない中で業務量は増えますし、刻々と変化する状況の中で診療報酬の変更対応や、新たな同意書取得の必要などが発生し、医療事務スタッフの負荷は増加します。このような感染症対策に追われ、業務が滞ってしまうこともあるでしょう。
今後、またいつパンデミックが起こるかはわかりません。そうした将来的な不安から、医療現場で働くことに抵抗を持ってしまう人も一定数存在するでしょう。また、就業意欲があったとしても、家族や周囲の方の感染症への知識や理解不足から、医療機関で働くことへの理解を得られず、退職を選択することも考えられます。
医療事務の人手不足の原因③採用活動の問題
・自院に合うよい人材が見つからない
・経営状況の悪化から人件費の捻出が難しい
・募集条件が見合ったものになっていない
・他の求人より見劣りしている可能性がある
医療事務の人手不足の原因として、採用活動がうまく進まないことも挙げられます。
採用活動の課題として、求人を出していても応募が集まらない、応募がきても求める人材が見つからないといったことがあるでしょう。応募が集まらない原因としては、募集条件が見合ったものにできていなかったり、他院の医療事務求人に比べて募集内容が見劣りしていたりすることが挙げられます。
また、経営状況が悪化している病院やクリニックでは、人件費の捻出が難しく、思うように採用活動を進められないといったケースもあります。
採用活動は、自院・自クリニックに見合った適切な形を、専門業者とよく相談しながら進めることが望ましいでしょう。
医療事務の人手不足が招くリスク
・患者さんに提供するサービスの質が低下する
・既存スタッフの負担が増加し、さらなる離職を招く
・経営状況の悪化につながる
医療事務の人手不足は、医療機関にさまざまな重大なリスクをもたらすおそれがあります。
たとえば、受付や会計などの業務がスムーズに進まないことで患者さんへの対応が遅れ、クレームの原因になったり信頼を損なってしまったりする可能性が考えられます。また、スタッフの負担が増えてさらなる離職を招き、それでも新たな人材の採用が進まないことで人手不足の悪循環に陥ることもあるでしょう。
医療事務の人手不足は、結果的に経営にも大きな影響を及ぼします。問題を放置したままだと、持続的な病院・クリニックの運営が難しくなるケースもあるため、対策をとることが重要です。
医療事務の人手不足の解決策8選

・待遇面の改善を目指す
・業務のマニュアルやオペレーションを見直す
・良好な人間関係を築ける工夫をする
・DX化を進めて現場の業務効率向上を図る
・自院に適した方法で採用活動を進める
・派遣の医療事務スタッフを導入する
・外部委託サービスを活用する
では、医療事務の人手不足を解消するには、どういった対策がとれるのでしょうか。ここでは、医療事務の人手不足の解決に向けて取り組むべき、8つの解決策をご紹介します。
労働環境を改善して働きやすさを高める
・労働時間の適正化
・短時間勤務など多様な働き方、柔軟なシフト制の導入
・ノー残業デーの導入 など
医療事務の労働環境を改善することは、離職率の低下と定着率の向上に有効です。柔軟な勤務時間や適切な休暇取得を推進するなどして、スタッフの働きやすさを向上させましょう。
近年は、プライベートを重視した働き方を望む人も多くいます。スタッフのモチベーション向上につながるよう、理想の働き方を実現できる仕組みを整えることがポイントです。
待遇面の改善を目指す
・給与の見直し
・福利厚生の充実
・キャリアパスの明確化
・研修やセミナーの提供、資格取得支援制度 など
給与の見直しや福利厚生の充実を図り、職場の魅力度を高めることも人手不足の解消に有効な施策です。医療機関は、一般企業に比べると大幅な給与の見直しは難しい可能性があるため、人件費や経営状況とのバランスを考えて対応することが求められます。
そのほか、明確なキャリアパスを準備したり、スキルアップの機会を設けたりすることで、スタッフの長期的な労働意欲の向上と成長支援ができ、優秀な人材の定着と確保に期待できるでしょう。
業務のマニュアルやオペレーションを見直す
・業務のマニュアル化
・オペレーションの見直し
・分業制の導入し業務範囲を限定する など
業務のマニュアル化やオペレーションの見直しは、業務効率を向上させるために重要です。標準化されたプロセスを導入することで、新しいスタッフの教育がスムーズになり、業務の質が一定に保たれます。
また、医療事務が担う業務を分業して、一人ひとりの業務範囲を限定することも効果的です。業務範囲が明確に決まっていることで、スタッフ一人ひとりが対応すべきことがわかりやすくなり、スムーズな運営を目指せます。
現場の業務の無駄を省いていくことで、時間やコストの削減ができ、より効率よく働きやすい環境を整えられるでしょう。
良好な人間関係を築ける工夫をする
・チャットツールや院内SNSの導入によるコミュニケーションの促進
・チームビルディング活動
・サンクスカードやピアボーナスの取り組み など
職場での良好な人間関係の構築は、医療事務スタッフの満足度を高めるためにも欠かせません。コミュニケーションの促進やチームビルディングの活動を通じて、信頼関係を築けるとよいでしょう。
良好な人間関係が構築できていれば、業務を円滑に進めることも可能となります。職場の居心地がよくなっていけば、働きやすい環境と認識できるようになり、離職率の低下につながることも期待できます。
DX化を進めて現場の業務効率向上を図る
・電子カルテシステム、AIの活用
・オンライン予約システムの導入
・オンライン資格確認システムの導入
電子カルテシステムやAIなどを活用してデータ管理が効率化されると、業務の正確性が向上します。また、オンライン予約システムの導入は、医療事務の受付業務の負担が軽減されるだけでなく、患者さんの利便性も高まります。
DX化によって業務効率化を進めることは、結果として労働環境の改善につながっていくでしょう。
自院に適した方法で採用活動を進める
・多様な求人媒体の活用
・SNSや自社サイトでの魅力の発信 など
自院の特性に合う求人媒体を選ぶことは、ターゲットとなる求職者に効果的なアプローチをするために重要です。オンライン求人サイトや専門誌、SNSなど、求人を掲載する媒体はたくさんあります。より幅広い求職者に情報を発信するためにも、複数の求人媒体を活用して採用活動を進めましょう。
また、採用を成功させるには、自院が求める人材像を明確にすることも大切です。ただ求人を出すだけでなく、自院で働く魅力が伝わるように打ち出すことを目指しましょう。
派遣の医療事務スタッフを導入する
派遣スタッフの活用により、必要な時期に必要なスキルを持つ医療事務の人材を確保することができます。派遣は採用期間を限定できるため、直接雇用に比べて人件費を抑えられるケースもあります。
また、派遣はスキルのある即戦力人材である場合が多く、柔軟な人材配置が可能となります。リソース不足を柔軟に解消できることで、経営の安定化も目指せるでしょう。
なおソラストでは、窓口業務や診療報酬請求業務など、さまざまな業務に対応できるスタッフを派遣・紹介するサービスを提供しています。各医療機関のスタイルをそのままに、人手不足の解消に役立てていただけます。
外部委託サービスを活用する
外部委託サービスの活用は、業務の効率化とコスト削減を実現するための有効な方法です。医療事務の一部業務を専門業者に委託することで、既存スタッフの負担を軽減し、業務の質も向上できます。
専門的な知識や技術を持つ業者に依頼することは、業務の正確性と効率性の向上も有効です。高度なスキルを必要とする業務を任せられ、かつ現場の人手不足が解消できることで、医療機関全体の運営がスムーズになるでしょう。
なお、ソラストでは、医療事務の業務をオンラインで代行する「iisy」をご用意しています。医療事務の業務の中でも一番知識が必要とされるレセプト点検を外部委託できるため、「高スキル人材の採用がなかなか進まない」「既存スタッフの教育が思うように進まない」といったお悩みを解決できます。
医療事務の人手不足解消に!ソラストのサービス

医療事務の人手不足解消には、ソラストのサービスが活用できます。ここでは、ソラストが提供する「医事関連 人材派遣・紹介サービス」「医事関連受託サービス」を紹介します。
医事関連 人材派遣・紹介サービス
・業務指揮命令は医療機関が行える
・医療機関ごとのニーズに合わせた契約形態で利用できる
ソラストでは、医療事務や医師事務作業補助者など、幅広い業務に対応できるスタッフの派遣・紹介サービスを展開しています。豊富な医療受託業務によって培ってきた強みを活かし、病院さま、開業医さまが必要とする人材の提供が可能です。
人材の雇用元はソラストですが、現場における業務の指揮命令権は医療機関に準じます。直接指揮命令ができるため自院・自クリニックの業務フローを活用しながら、必要な人材を確保できます。
医事関連受託サービス
・労務管理や事務作業はソラストが担当
・採用や労務管理が不要となり、人件費の定量化も目指せる
ソラストの「医事関連受託サービス」は、業務を外部に委託するサービスです。スタッフの勤怠管理や採用調整・指揮命令などの管理はソラストが行うため、医療機関側の労務管理の負担を大きく軽減し、人件費の定量化を目指せます。
また、ソラスト独自の教育・研修を行ったスタッフを即時に配置可能です。即戦力として活躍してくれる医療事務スタッフを求める病院経営者さま、開業医さまに向いています。
医療事務の人手不足の原因を把握し、最適な解決策を講じよう
医療事務の人手不足の原因には、離職率の高さ・定着率の低さといった業界ならではの問題に加え、少子高齢化、採用活動の課題といった課題が挙げられます。まずは、自院・自クリニックの医療事務が不足している原因を明らかにするところから始めましょう。
また、一時的な人手不足を解消したい、採用コストをかけずに必要なリソースを確保したいといった場合には、派遣スタッフや外部委託サービスの活用も有効な方法です。
ソラストでは、医療事務の人手不足解消に活用できる「医事関連 人材派遣・紹介サービス」「医事関連受託サービス」を提供しています。採用や労務管理の手間を省きたい、ニーズに合った人材を必要なだけ確保したいといった場合におすすめです。