診療報酬の仕組みを簡単解説!点数や請求の流れ・正確な業務のために大切なこと
診療報酬とは、保険医療サービスに対して支払われる報酬であり、医療機関の収益源でもあります。診療報酬は医療機関の運営にも大きく影響するため、しっかり診療報酬を確保することが大切です。今回は、診療報酬の仕組みや請求の流れ、正確な業務のために大切なことを解説します。
診療報酬とは?医療機関への支払いの仕組み
診療報酬についてより深く知るためにも基礎知識を確認しておきましょう。まずは、診療報酬とは何かを踏まえ、医療機関への支払いの仕組みを解説します。
診療報酬とは
診療報酬とは、保険医療機関や保険薬局が提供する保険医療サービスに対して支払われる報酬のことを指します。日本の公的医療保険制度に基づくものであり、医療機関の主な収入源です。
診療報酬は、医療保険制度を通じて患者さんが支払う自己負担分と、保険者が支払う公的負担分から成り立っています。公的医療保険制度があることで、患者さんは比較的軽い負担で医療サービスを受けられます。
診療報酬が医療機関へ支払われる仕組み
医療機関は提供した医療サービスに基づいて診療報酬を請求し、審査を経てその支払いを受けます。
まずは、医療機関が患者さんに提供したサービスを記録し、その記録を基に請求書を作成します。次に、作成した診療報酬請求書を審査支払機関に提出し、適切な内容であるかどうかが審査されるという流れです。
審査通過後、審査支払機関から保険者に請求書を送付します。そして、保険者から請求額に応じた医療費の支払いがあり、審査支払機関を経由して医療サービスを提供した医療機関などに診療報酬が支払われるという仕組みとなっています。
診療報酬の支払い方式
出来高払い制 | 医療行為に応じて診療報酬が決まる仕組み |
---|---|
包括払い制 | 国が定める診療内容に基づき定額の報酬が支払われる仕組み |
診療報酬の支払い方式は、「出来高払い制」と「包括払い制」の2種類があります。
出来高払い制では、医療行為・サービスごとに料金が設定されており、患者さんに行った医療行為・サービスに基づいて報酬が支払われます。一方、包括払い制は、国が定める診療内容に基づき、定額の報酬が支払われる仕組みです。
診療報酬の支払いは基本的に出来高払い制が取られていますが、一部に包括払い制を組み合わせている場合があります。
診療報酬の点数と加算
診療報酬の点数と加算についてしっかり理解することは、経営状況を改善するうえでとても重要です。ここでは、診療報酬の点数と加算について詳しく解説します。
診療報酬点数表とは
診療報酬点数表は、医療機関が提供する各種医療行為に対する報酬を点数で示した一覧表です。診療報酬は「1点=10円」で計算され、点数表を基に医療機関側で診療報酬を請求します。
なお、点数は医療行為の内容や必要な技術、時間、資源に基づき、厚生労働大臣が細かく設定しています。この点数は全国どこでも一律です。患者さんに交付する領収書や診療明細書にも記載されます。
診療報酬点数の分類と種類
基本診療料 | 点数 | 特掲診療料 | 点数 |
---|---|---|---|
初診料 | 291点 | 在宅患者診療・指導料 往診料 | 720点 |
再診料 | 75点 | 検査 尿中一般物質定性半定量検査 | 26点 |
入院基本料 一般病棟入院基本料(1日につき) 急性期一般入院料1 | 1,688点 | エックス線診断料 単純撮影の場合(胸部) | 85点 |
特定入院料 救命救急入院料(1日につき) 救命救急入院料1 3日以内の期間 | 10,268点 | 調剤料 入院中の患者以外の患者に対して投薬を行った場合 イ 内服薬、浸煎薬及び屯服薬(1回の処方に係る調剤につき) | 11点 |
診療報酬点数は、医療行為の種類や内容に応じて分類されています。診療報酬を大きく分けると、初診料や再診料などの「基本診療料」と、医学管理や在宅医療などの「特掲診療料」の2種類です。
さらに、各分類内でも細かく種類が分けられています。たとえば、外来診療には初診料や再診料、入院診療には入院基本料や特定入院料などが設定されています。
診療報酬の加算について
診療報酬の加算とは、医療機関が特定の条件を満たした場合に基本の点数に報酬が追加されることです。夜間や休日の診療、特定の技術や設備を使用した診療では、加算が適用されることがあります。
代表的な加算には、下記の項目が挙げられます。
・時間外加算(休日・深夜など含む)
・地域包括診療加算(診療所のみ対象)
など
また、入院基本料等加算の中で一般的なものとして、救急医療管理加算、医療安全対策加算、感染対策向上加算、診療録管理体制加算、医師事務作業補助体制加算、急性期看護補助体制加算などがあります。
診療報酬請求の仕組み・流れ
2. 診療情報をレセプトコンピューターに入力する
3. 医療事務員が請求内容をチェックする
4. 医師によるダブルチェックをする
5. 翌月10日までに審査支払機関に提出する
現在、診療報酬の請求は基本的に電子レセプトで行います。診療情報を電子レセプト請求の専用機器「レセプトコンピューター」に入力すると自動で点数を計算することが可能です。入力内容をチェックし、誤りがなければ医師によるダブルチェックを行います。
レセプトは、診療を行った月の翌月10日までに審査支払機関へ提出します。
また、診療報酬請求は全て保険者に請求するわけではなく、患者さんの自己負担が発生することも覚えておきましょう。
【2年ごと】診療報酬改定の仕組み
診療報酬改定とは
診療報酬改定とは、医療機関が提供するサービスの価格を見直すプロセスです。医療費の適正化と医療サービスの質向上を目的に政府主導で、医療診療報酬・歯科診療報酬・調剤報酬が原則2年に1度のペースで見直されます。
診療報酬の見直しは、政府の予算を踏まえて、中医協(中央社会保険医療協議会)が議論を重ね、最終的な点数を決定します。
診療報酬改定の影響
医療機関への影響 | 患者さん・保険者への影響 |
---|---|
・医療機関の収益の増減 ・新たな医療技術やサービスの導入の必要性 |
・自己負担額の増減 ・保険者の負担額の増減 |
診療報酬改定は、医療機関の経営に直接的な影響を与えます。改定により報酬が増減すれば、それに比例して医療機関の収益が増減します。収益が減少した場合には運営方針の見直しが迫られる場合もあるでしょう。
新たな医療技術やサービスの導入が求められる場合もあり、医療機関は柔軟な対応が必要です。
また、診療報酬改定は患者さんと保険者の医療費負担にも影響を与えます。たとえば、報酬がプラス改定される場合は、患者さんが支払う自己負担額と保険者の負担額が増加します。
なお、令和6年の診療報酬改定では、診療報酬本体が0.88%引き上げられました。
診療報酬が医療機関に与える影響
・レセプト査定・返戻があると収益化までに時間がかかる
・経営状況に直結するため、正確な診療報酬請求が必須
診療報酬は医療機関の収益源です。支払われた診療報酬から、医師や看護師、他スタッフの人件費や診療・治療で使用する医薬品費、医療機器や設備の費用などをまかなっています。つまり、診療報酬が適切に支払われないと、医療機関の経営状況に影響が出てしまうのです。
診療報酬の請求内容に誤りがあると「レセプト査定」「レセプト返戻」が行われ、正しい内容への修正が必要となります。レセプト査定や返戻が発生すると収益が確保できないだけでなく、手間が増えて業務効率が下がるなどさまざまな弊害が起こる可能性があります。
近年は電子カルテやレセコンの導入により診療報酬請求は電子化されていますが、診療情報等の入力判断やチェック、システムの管理などは人力により行われるため、レセプトの査定や返戻、もしくは請求漏れなどが発生する可能性は十分に考えられるでしょう。業務効率を上げ、安定した収益を得るためにも正しい診療報酬請求が求められます。
正確な診療報酬請求のために医療機関が行うべきこと
・業務の流れやマニュアルを明確にする
・正確な対応の重要性をスタッフ全体で周知する
医療機関にとって、診療報酬の正確な請求は経営の根幹を成す重要な要素です。そのため、診療報酬請求を行う医療事務スタッフに対して研修や教育を行い、正確な業務ができるよう指導する必要があります。
まずは、業務の流れを明確に示したマニュアル・フロー図を作成し、すべてのスタッフが業務の進め方に共有認識を持てるようにしましょう。
また、診療報酬請求に誤りがあり返戻が多い場合、再請求処理が必要です。再請求処理が発生すると医療機関の収益化までに時間がかかってしまい、経営状況にも直接的な影響を及ぼしてしまいます。
診療報酬の仕組みを理解したうえでその重要性を理解し、ミスなく正確な請求が大切であることをスタッフ全体に周知しましょう。
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診療報酬は医療機関の収益!仕組みを理解し、正しく請求することが大切
診療報酬は、提供した医療サービスに対して支払われる報酬です。医療機関の収益源となるものであり、診療報酬から医師や看護師などのスタッフの給料や備品、設備などの支払いも行います。
医療機関の収益、そして運営に関わる重要なものであることからも、診療報酬は正確な請求が不可欠です。
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