病院経営の課題・赤字の要因とは?成功のポイントも解説
病院経営の課題や問題を抱えていませんか?赤字が続いている、何をどう改善したらよいかわからないなど、課題に直面している病院経営者様は意外と多いでしょう。本記事では、病院の経営者様に向けて、赤字になってしまう要因と経営を成功させるポイントを紹介します。自院の現状や課題と照らし合わせて、改善策を分析してみましょう。
病院経営の現状・実態
医療環境の急速な変化や社会的な要請もあり、病院経営はさまざまな課題に直面しています。「2023 年度 病院経営定期調査 概要版」によれば、赤字に陥っている病院の割合は、2021年度で65.8%、翌2022年度は72.8%にまで増加。原因として、医療従事者の不足や人件費の増加、物価高により経費が増大していることなどが考えられます。
病院経営におけるさまざまな課題を克服するために、戦略的な経営判断や柔軟な対応が求められるでしょう。今後、さらに医療技術は進歩し、高齢化社会も進んでいきます。持続可能な経営を実現するために、病院経営者は常に新しいアプローチを模索し続ける必要があるといえるでしょう。
参考:一般社団法人 日本病院会/公益社団法人 全日本病院協会/一般社団法人 日本医療法人協会「2023 年度 病院経営定期調査 概要版」
病院経営の課題・赤字になる4つの要因
病院経営で赤字になってしまう要因として、医療の担い手不足や人件費の増加などが考えられます。病院経営の大きな課題を招く要因4つを見ていきましょう。
医療従事者の不足
病院経営において、医療従事者の不足は深刻な問題です。高齢化が進む中、労働人口が減っていることは大きな社会問題でもありますが、医療業界はとくに深刻。地方や過疎地域では医師や看護師の確保が難しくなっており、医師不足により診療科の閉鎖や診療時間を短縮せざるを得ない病院もあるでしょう。
医療従事者の不足により、負の連鎖で患者さんの数が減少し、収益が減少するリスクも高まります。また、医療従事者の過労による離職率の増加もあり、慢性的な人手不足の原因にもなっています。
人件費の増加
医療従事者の給与や福利厚生は、質の高い医療サービスを提供するために不可欠です。しかし、人件費の増加は病院の財務状況に大きな影響を与える要因でもあります。病院の売上高に対し人件費の比率が高くなりすぎると、当然のことですが経営が厳しくなるでしょう。
一般病院の人件費比率は平均58%とされていて、増加傾向です。慢性的に長時間勤務となる状況を改善するために医療従事者の人員を増やし、赤字に陥るケースもあります。
病床利用率の低下
病床利用率の低下は、病院経営に深刻な影響を与える要因の1つです。病床利用率の平均は、厚生労働省の「令和4(2022)年医療施設(動態)調査・病院報告の概況」によると、病院の全病床で75.3%、一般病床で69.0%であり、割合が高いほど入院診療による収益が高くなります。病床利用率が平均を大きく下回ると病院の収益が減少し、経営が赤字に転じる可能性が高まるでしょう。
入院診療による収益は、患者さんの状態や治療行為によって異なるものの、診療する患者さんの層に見合った病棟機能が診療報酬上で設定されています。とくに人件費や設備投資などが多くかかる病院であるほど、病床利用率が病院の収益に直結します。
新型コロナウイルスによる影響
新型コロナウイルスの流行は、病院経営に多大な影響を与えました。感染拡大防止のための厳格な衛生対策に伴うコストは大きな負担となり、非緊急の診療や手術の延期も多く発生。さらに、医療従事者の感染や過労による離職の増加などで、大事な人材が流出する事態も起きました。
また、患者さん側も緊急ではない受診を控えたり、予定していた入院を延期したりすることがあり、本来の収益源が減少。新型コロナウイルスの影響を受けて、多くの病院が経済的に厳しい状況に置かれました。
病院経営を成功させる5つのポイント
病院経営を成功させるために知っておきたい5つのポイントについて紹介します。
経営状況の正しい把握
経営状況の正しい把握は、病院の経営成功に欠かせない重要な要素です。一般的な企業であれば当たり前のことでも、病院経営ではおろそかにされやすいため、収支を正確に把握しましょう。
医業の収益はどのくらいであるか、どのくらいの経費がかかっているのか、収支のバランスを確認し、収入と支出の詳細なデータを分析します。医師は医療のスペシャリストではありますが、経営の視点が欠けてしまう場合も。経営指標を活用して病院全体の収支状況を評価し、改善が必要な箇所を迅速に特定するなど、客観的視点にもとづいて現状把握に努めましょう。
雇用状況の見直し
雇用状況の見直しも、病院経営の課題解決に重要なポイントです。現状の人員配置や業務負荷を正確に把握し、必要に応じてスタッフの再配置や新規採用を行いましょう。
個人の努力や成果を正当に評価できる制度を導入することで、勤務している医療従事者やスタッフのモチベーションを上げられます。現状維持で満足せず、つねに福利厚生や給与の見直しなどを検討しましょう。
また、定期的な研修やスキルアップの機会をつくって医療従事者の専門性を高め、離職率の低下を図ることも大切です。
コスト削減・適正化
病院を継続して経営していくためには、不要なコストを削減し適正に保つ工夫が重要です。
【見直しが必要な経費】
・通信費
・水道光熱費
・保険料
・診療材料費
・業務委託費
・人件費 など
医薬品は仕入れ先を絞って1社あたりの取引金額を増加させて、値引き交渉をするのもよいでしょう。在庫を持ちすぎないことで、医薬品の期限切れによる無駄も省けます。
通信費や水道光熱費などの固定費は、インターネットや電話回線などを見直すことでコストを削減できる可能性が。カバー範囲が過剰すぎる保険も見直してみるとよいでしょう。
また、人件費を大幅に削減することは難しいですが、業務の効率化を図るためにIT技術を活用することもおすすめです。電子カルテやAIを活用した診断支援システムの導入を検討することで、全体的なコスト削減ができる場合もあります。
サービスの質向上
病院として収益を上げるためには、集患が重要です。「困ったときにはこの病院に行く」「ここで診てもらいたい」と思ってもらえるよう、地域の患者さんからの信頼を獲得する工夫が欠かせません。高い医療技術を持ち、サービスの質を向上させることが不可欠です。
地域の特性や患者さんのニーズを正しく把握し、特性に合わせた経営体制にする必要があります。患者さん目線を考えつつ、スタッフの教育や働きやすい職場づくりを目指し、円滑なコミニュケーションが取れるように改善しましょう。充実した職場環境を整えることで、患者さんへのサービス向上、さらには病院の黒字化にもつながる可能性があります。
経営戦略の見直し
病院を経営する際は、都度戦略を見直しながら経営を進めることが重要です。地域住民に対して病院の認知度を高めるPRやマーケティング戦略を強化し、潜在的な患者さんを掘り起こしましょう。
待ち時間の短縮や診療の質向上など、患者さんのニーズに応えることも大切です。とくに待ち時間の短縮は、患者さんに見えやすい部分であり、患者満足度を高める施策として欠かせません。
業務プロセスの最適化やITシステムの導入を進め、病院内部の効率化を図ることで、医療従事者や事務スタッフ、患者さんすべてにとってよい環境を整えられます。多角的な改善を行い、病院経営の安定化と持続可能な成長を目指していきましょう。
病院経営と今後の課題に関するQ&A
病院経営や今後の課題についてよくある質問についてお答えします。
Q.今後、病院の経営を取り巻く状況はどう変化する?
地域医療構想の推進や高齢化の加速などが影響して、今後は病院の統合や再編が加速していくと考えられます。病院がある地域や担う機能によっては、今まで通りに変わらず経営したいと考えていても、流れについていけない可能性もあるでしょう。
しかし、これを逆に好機ととらえ、経営課題の解決のための手段として活用する手もあります。柔軟な考えを持ち、病院を経営していくことが求められます。
Q.経営者の取り組みだけで課題解決が難しいときは?
病院には医療のスペシャリストが必要ですが、「安定した経営」のためには経営のスペシャリストも必要と考えましょう。医療の知識と経営の知識は別ものです。経営面に不安がある場合には、プロのコンサルティングを依頼するのもおすすめ。経営のプロの意見をもとに病院経営ができるため、失敗のリスクが下がり医療面に注力できます。
ソラストでは、開業医や病院の経営者を支える「医療機関経営支援サービス」を展開しています。病院経営者の皆様が抱える経営課題の解決に取り組み、ITの導入支援や働き方改革に向けたサポートも実施しています。
【ソラストでできること】
・病院・クリニックIT支援
・働き方改革のサポート など
自院の課題を把握し、安定した病院経営を目指しましょう
病院経営の現状や課題、赤字になる要因などについて紹介しました。高い医療技術を提供していても、経営はまた別のものです。長く経営していくために、医療技術はもとよりマネジメントや財務管理などの知識も蓄える必要があります。地域住民に認知され、集患できるようなプロモーション活動も有効です。経営の改善やコスト削減にも取り組み、ポイントを知って病院経営を行いましょう。
経営には自信がない、もっと医療部分に注力したいとお考えの方には、ソラストの「医療機関経営支援サービス」がおすすめです。医事業務受託で蓄積した業務運営の経験をもとに、病院経営における改善機会の抽出と課題解決をサポートします。IT化の支援などにも対応していますので、ぜひソラストの医療機関経営支援サービス活用をご検討ください。