病院とクリニックの違いは？経営者・開業医に求められる役割を解説

同じ医療機関であっても、病院とクリニックには違いがあります。今回は経営者さま向けに、病院とクリニックの具体的な違いをご紹介します。施設面や機能面、看護師や医療事務といった職員の違い、診療報酬の違いなどさまざまな面からご紹介しますので、これからクリニックの開業をお考えの方はご一読ください。

病院とクリニックの主な違い6つ

病院とクリニックの主な違いを上記の表にまとめました。以下で詳しく解説するので、みていきましょう。

病床数の違い

まず、病院とクリニックの大きな違いのひとつは、病床数にあります。病院は20床以上の病床を持ち、入院設備が充実していることが特徴です。

一方で、クリニックは病床を持たないか、持っていても19床以下と定められています。また、病床の種類は、一般病床、療養病床、精神病床、感染症病床、結核病床の5種類がありますが、クリニックで設置できるのは「一般病床」と「療養病床」のみです。

役割の違い

病院とクリニックには、明確な役割の違いがあります。

病院はクリニックに比べて高度な医療を提供し、専門的な診断や治療、入院医療などを担っています。他にも、急性期医療や慢性期医療、回復期リハビリテーションなどを担い、緊急時の救急医療や専門科の連携が求められるケースにも対応します。

一方、クリニックは一般的な外来診療を中心に行っており、地域に密着した「かかりつけ医」としての機能が求められます。日常的な健康管理や、体調不良やケガなどがあった場合の初期診療などの対応が主たる役割です。

構造設備の違い

病院もクリニックも、医療法施行規則によって構造設備に関する基準が定められています。構造設備については非常に細かく定められており、たとえば、「病室は地下や地上3階以上に設けないこと」「火気を使用する場所に防火上必要な設備を設けること」などがあります。

なお、医療法施行規則で定められた構造設備の基準の中には、患者さんを入院させるための施設を持たないクリニックなどに適用されない条件もあります。

人員配置の違い

病院は多くの医療スタッフが勤務し、各専門分野に特化した医師や看護師が揃っている特徴があります。一方、クリニックの場合は少人数の職員で運営されることが多く、医師と数名のスタッフで構成されていることがほとんどです。

また、病院では、病院や病床の種類に応じて人員配置標準が定められています。たとえば、一般病院における一般病床の場合、患者1人に対して医師は16:1、薬剤師は70:1、看護職員は3:1の比率での配置を満たすことが必要です。

参照：厚生労働省「病院・診療施設・人員配置基準（医政局資料）」

診療報酬の違い

診療報酬の点数表は病院もクリニックも共通しているため、診療・検査内容が同じであれば選定できる診療報酬も同じです。しかし、病院とクリニックでは、扱う診療の内容が異なる場合があります。

病院は専門診療や入院医療を中心に行うため、選定できる診療報酬は高くなる傾向にあります。対してクリニックは、一般的な外来診療を中心に行うので、選定できる診療報酬は比較的低くなるでしょう。

選定療養費の違い

大病院の場合、クリニックからの紹介状なしで受診すると「選定療養費」が加算されることがあります。大病院へ受診する患者さんには、まずクリニックで大きな病院での治療が適切と判断したうえで大病院への紹介状を提供し、患者さんを紹介する流れで対応をします。

病院経営者・クリニックの開業医に求められる役割

病院とクリニックでは病床数や人員配置の決まりなどに違いがありますが、それぞれの経営者に求められる役割も同様に異なります。ここまでご紹介した病院とクリニックの違いを踏まえて考えてみましょう。

病院経営者に求められる役割

病院はクリニックよりも診療科の数が多く、扱う医療は専門的なものであることが特徴です。クリニックに比べて、日々たくさんの患者さんの診察を行うため、経営者にはより質の高い医療サービスを提供するための環境整備が求められます。

そのためには、病院が担う機能を明確にし、必要に応じてクリニックへの逆紹介を行う、などの対応が必要です。

また、病院はクリニックよりも多くのスタッフを抱えているため、部署ごとに分業制を取り入れたり、役割を明確にしたりして、効率よく仕事を進められる体制を整えることが求められます。

クリニックの開業医に求められる役割

クリニックは、地域に密着して軽症の患者さんの外来診療を行ったり、かかりつけ医としての機能を担ったりします。病院に比べて患者さんとのつながりがより密接になりやすいため、信頼関係を築き、個々のニーズに応じた診療を行うことが不可欠です。

また、クリニックは病院に比べて規模が小さいため、採用できるスタッフの数にも限りがあります。よりスキルの高い職員を獲得するため採用に力を入れたり、スタッフにとって働きやすい環境を整えたりすることもより重要になるでしょう。

クリニックの開業を進める手順

クリニックの開業までには、一般的におよそ1年〜1年半程度必要です。クリニックのコンセプトについて計画を立てたら、まずは開業地の選定から始めます。立地の将来性や周囲の競合、適した物件の調査を行いましょう。開院について事前に医師会へ相談するとアドバイスがもらえる場合もあります。

事業計画は金融機関から融資を受ける場合、収入面についても計画を立てておく必要があります。開業資金だけでなく、その後の運転資金もゆとりを持って用意しておくことで、クリニックの経営が軌道に乗るまでの期間もより安心できるでしょう。

内装工事は、クリニックの内装工事を請け負った実績がある業者に依頼することがおすすめです。クリニックで使用する医療機器については、購入またはリースで準備を進めます。導入する電子カルテも忘れずに選定しましょう。

開業の3カ月ほど前には求人を出します。質の高いスタッフを確保するため条件や求人媒体を検討しましょう。保健所・医師会へ開設届、青色申告の届出も行います。

なお、クリニックは病院と違い、集患のための活動も開業医自身で進めていく必要があります。クリニックのWebサイトの最適化やWeb広告の打ち出しといった「オンラインの施策」に加え、看板や街頭広告の設置、雑誌やチラシへの掲載など「オフラインの施策」の両方に力を入れることが大切です。

【病院経営者および開業医さまをサポート】ソラストの医療機関経営支援サービス

ソラストの「医療機関経営支援サービス」では、医療機関の収益改善や保険診療・施設基準遵守などの観点から、病院やクリニックの経営者さまを支援します。これまでの医療業務受託経験をもとに、さまざまな観点から診療報酬が適正に算定されているかを調査し、貴院の収益改善を目指します。

また、日々移り変わる法令への対応もおまかせください。新しい制度に現場の理解が追いつかず、当局指導において行政処分が発生するケースも散見されます。対策として、当社の精通したスタッフが改善を支援します。

さらに、組織改革・DX導入のためのサービスとしては、外来レセプト業務や病院案内システムの効率化につきスタッフの作業時間を削減できるようご提案します。ぜひお気軽にご相談ください。

病院とクリニックの違いに関するQ＆A

病院とクリニックの違いに関してよく聞かれる質問とその回答を以下にまとめました。開業をご検討中の方は参考にしてみてください。

Q.クリニック・診療所・医院の違いは？

クリニック・診療所・医院と呼び方は異なりますが、実際はすべて同じものを指します。医療法上はこれらをまとめて「診療所」と呼びますが、医療機関名をつけるときに、より親しみやすい「クリニック」や「医院」を使うことが多いようです。

Q.クリニックは医師免許がない人でも開業できる？

医師免許を持たない人がクリニックを開業する場合、医療法人、MS (メディカルサービス）法人、医療法人のM &A、一般社団法人のいずれかである必要があります。

医師以外の人がクリニックを開業するメリットとしては、経営者が経営に集中できることや、医師が診療に集中できることなどが挙げられます。

なお、医師以外の人が「開設者」になることはできますが、そのクリニックの「管理者」は医師免許を持つ人物でなければいけません。加えて、医業を行う人も「医師」であることが必要です。

Q.病院にはどんな種類がある？

病院には、一般病院だけでなく、病床の種類や機能、役割によってさまざまな種類のものがあります。種類によって、人員配置や構造設備など基準が定められています。とくに特定機能病院は高度な医療に特化し、地域医療支援病院は地域のかかりつけ医への支援を行うことが目的となっています。

なお、病院の種類による役割分担だけでなく、病床の種類や病棟が持つ機能によっても役割分担がされています。病床は、精神病床・感染症病床・結核病床・療養病床・一般病床の５種類が定められており、病棟としては高度急性期機能・急性期機能・回復期機能・慢性期機能があります。

【病院の主な種類】

病院とクリニックの違いを理解し、役割に応じた運営を目指しましょう

ご紹介したように、病院とクリニックは異なる役割を担っています。病院・クリニックそれぞれの役割を念頭に置き、ときには役割を分担することで、より効率的な診療活動を目指していけるでしょう。その取り組みが、地域全体でより質の高い医療を提供することへの助けとなります。

ソラストでは、医療機関の収益改善のほか、DX導入や組織改善の支援を実施しています。時代の変化や法令の改正に伴う、運用体制の見直しにお悩みの経営者さまも多いでしょう。実務経験豊富なソラストのスタッフが、医療機関の経営課題をサポートいたします。お見積りはお気軽にお問い合わせください。