クリニックの人件費率の平均は?適正化・見直しの注意点と安定した経営を目指す秘訣


人件費率とは、クリニックの収益に対して人件費が占める割合を指します。クリニックの安定した経営を目指すために、適切な「人件費率」を維持することが大切です。本記事では、クリニックの人件費率を適正化する4つの方法や人件費を見直すときの注意点について詳しく解説します。
クリニックの人件費率とは【適正値・平均値について】

クリニックの収益に対して、人件費率が高くなると経営を圧迫します。ここでは、クリニックを経営するうえで目安として知っておきたい、人件費率の適正値と平均値について解説します。
クリニックの人件費率とは
「人件費率」とは、クリニックの総収入に対して人件費がどの程度占めているかを示す割合です。人件費には、スタッフに支払う給与や各種手当、賞与、各種手当の費用などが含まれます。
人件費率は、クリニックの運営を行ううえで重要な経営指標です。人件費率が高すぎると利益を圧迫し、低すぎる場合はサービスの品質やスタッフの満足度に影響を及ぼします。そのため、適正な人件費率を維持することは、クリニック経営の安定性や健全性を保つために不可欠です。
クリニックの人件費率【適正値】
クリニックの人件費率の適正値は、一般的に収入の25%を超えない程度が望ましいとされています。たとえば、クリニックの年間収入が4,000万円であれば、人件費はその25%の1,000万円までが適切だと考えられるでしょう。
しかし、無床か有床であるか、院内処方か院外処方であるかといったクリニックの形態や規模、スタッフの人数、開業年数などの要因によって、人件費率の適正値は異なります。よって、人件費率25%程度という値は、すべてのクリニックに一律に当てはめることはできません。一般的に、スタッフの人数が多く規模が大きいクリニックほど、必要な人件費は増えるため、収益の状況によっては人件費率が25%を超えることも多いでしょう。
クリニックの人件費率【平均値】(令和4年)
一般診療所(個人) | 一般診療所(医療法人) | |
---|---|---|
全体平均 | 25.0% | 49.0% |
入院診療収益あり | 31.3% | 49.0% |
入院診療収益なし | 24.6% | 48.7% |
参考:厚生労働省「第24回(令和5年実施)医療経済実態調査(医療機関等調査)」
厚生労働省の「第24回医療経済実態調査(医療機関等調査)」によると、給与費が占める割合は上記のとおりです。
個人クリニック(入院診療収益なし)の人件費率は24.6%と適正値に収まっていますが、医療法人(入院診療収益なし)の人件費率は49.0%と高めになっています。医療法人では医療スタッフに加え管理や事務スタッフも多く必要であるため、その分人件費率が上昇すると考えられます。
また、入院診療収益あり・なしで比べた場合、「あり」のクリニックの方が、個人・医療法人ともに給与費が高めです。入院診療を行う場合は携わるスタッフ数も増えるため、人件費率が高くなると考えられます。
クリニックで人件費率の適正化が重要な理由
・人件費率が低すぎる場合は、スタッフの質を維持できずサービスが低下する
・人件費率を適正化することで、クリニックの全体的な収益性が向上する
人件費率はクリニックの経営状況を把握する重要な指標です。過度に高い人件費率は収益を圧迫し、経営の安定性を損なう可能性があります。一方、低すぎる場合はスタッフの質やモチベーションが下がり、サービス水準の低下を招くリスクが考えられるでしょう。
適正な人件費率を維持するには、収益の動向や市場の変化を常に把握し、戦略的な人材管理を行うことが不可欠です。これにより、持続可能な経営と質の高い医療サービスの提供を両立できます。
クリニックの人件費率を適正化する4つの方法

クリニックの経営において、人件費は比較的大きな割合を占めています。そのため、人件費率を適正化し、経営の持続的な安定化を図ることが必要です。ここでは、クリニックの人件費率を適正化するための方法を4つ紹介します。
業務の効率化・自動化を進める
クリニックの人件費率を適正化するには、業務の効率化・自動化を進めることが重要です。たとえば、電子カルテやオンライン診療予約システムなどの導入により、業務の手間を大幅に削減できます。
手作業や煩雑な事務業務にかかる時間を削減すれば、限られた人材の有効的な活用が可能です。スタッフが重要な医療業務に集中できる環境が整い、患者さんに提供するサービスの向上にもつながるでしょう。
また、AIを活用した診断支援システムや給与計算、勤怠管理の自動化を行うと、人的ミスを防ぎつつ効率的な業務運営が可能になります。
【業務の効率化・自動化のために行う取り組みの具体例】
・AI診断支援システムの導入
・給与計算、勤怠管理を自動化するシステムの導入
スタッフの配置を見直す
スタッフの配置を見直すことは、クリニックの効率的な運営に非常に効果的です。各スタッフの能力や専門性を最大限に活かした、適切な配置が鍵となります。また、各職種の業務を明確に分担することで、無駄を省き効率的な運営を実現できるでしょう。
さらに、診療時間や患者さんの数に応じて柔軟なシフトを組むことで、忙しい時間帯に必要な数の人材を配置できます。過剰な人員配置を避けながら、人材を効果的に活用できるでしょう。
業務の一部を外部委託する
クリニック業務の一部を外部委託することで、内部リソースの効率的な活用が可能です。診療報酬請求やクラーク業務、受付・会計業務などの業務を外部に委託すれば、内部スタッフの負担を軽減し、コア業務に集中できます。
ただし、外部委託を行う際は、コストとサービスの質を慎重に比較検討し、信頼性の高い業者を選ぶことが重要です。
【外部委託できる業務の具体例】
・受付・会計業務(患者さん対応や会計処理)
・クラーク業務(医師の事務サポート)
パート・アルバイトや派遣社員を導入する
パートやアルバイト、派遣社員を導入することで、人件費を抑えつつ必要な業務を効率よくカバーできます。フルタイム正社員を採用する場合よりも柔軟な人員配置が可能で、繁忙期や患者さんが集中する時間帯などに対応しやすくなります。
また、パートやアルバイト、派遣社員を導入することで、正社員を採用するよりも社会保険料などの負担を軽減できる面もあります。ただし、導入に際しては適切な教育と管理体制を整え、業務の質を維持する工夫が大切です。
クリニックの人件費を見直すときの注意点
クリニックの人件費の見直しは、経営の安定化とコスト削減を図るうえで重要ですが、誤ったアプローチは逆効果を招きかねません。ここでは、クリニックの人件費を見直すときの4つの注意点を挙げます。
人件費の削減だけにとらわれない
人件費率の適正化は、「単に人件費を削る」だけでは逆効果です。人件費をやみくもに削ると、スタッフの離職が増えて日常業務が滞ってしまいます。求人費や教育コストが増えてしまい、負のインパクトを与える可能性が高まるでしょう。
また、クリニックでは人件費以外にもさまざまなコストがかかっています。現状の人件費が適正であるにも関わらず、業務効率が低い場合もあるでしょう。
そのため、まずは現状のまま業務効率化を目指したり、他のコスト削減を優先したりして、バランスの取れた経営を目指すことが重要です。
労働基準法など法令遵守を徹底する
人件費の削減を考える際は、労働基準法などの法令遵守を徹底することが重要です。法令に違反した労働条件を作成しないように注意し、適正な労働時間や確実な給与の支払いを行うことで、職員の安心感を高めることができます。
また、法令に基づいた労働環境を整えることで、職員と長期的な信頼関係を築き、組織全体の安定した運営にもつながります。職場全体のルールを見直し、適切に管理することが大切です。
職員がモチベーションを保って働ける工夫をする
単にコスト削減を図るのではなく、職員がモチベーションを保って働ける工夫をすることが大切です。人件費率を適正化しつつ、やりがいを感じられる職場環境を提供することで、生産性の向上や職員の定着率の向上が期待できるでしょう。
また、明確な評価制度を設けたり定期的なフィードバックを行ったりして、職員の努力を適切に評価し、報酬に反映させることで満足度が向上します。さらに、インセンティブの導入やスキルアップを支援する研修制度を整備することで、職員の成長と職場全体の生産性向上につながります。
収益を増やす取り組みも同時に行う
人件費率を適正化するためには削減だけでなく、収益を増やす取り組みも重要です。ミスなく正しい診療報酬請求を徹底し、収益を確実に得られるようにしましょう。
また、地域の患者さんとの信頼関係を築き、「何かあったときはここにくれば安心」と思ってもらえるような集患対策を行うことも効果的です。これらの施策を並行して実施することで、健全な経営と患者満足度の向上を両立できます。
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クリニックの人件費率を適正化して安定した経営を目指そう
クリニックの人件費の適正化は、経営の持続的な安定や収益性向上において非常に重要な要素です。単に人件費を削ることだけ考えるのは逆効果になってしまいます。スタッフのモチベーションや就労環境を考慮しながら、業務の効率化やシステム導入などを進め、人件費と収益のバランスをとっていく必要があります。
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