看護助手の離職率低下はどう防ぐ?原因と対策・長く働ける職場の特徴を紹介


看護助手は、看護師の業務を補助する大切な役割を持つ職員ですが、比較的離職率が高いといわれています。看護助手の職場定着にお悩みの医療機関経営者さまに向けて、看護助手の離職率や背景にある問題、離職防止に効果的な対策を解説します。看護助手が長く働ける職場の特徴も紹介しているので、職場環境の改善にお役立てください。
看護助手の離職率とその背景
看護助手は比較的離職率が高い職種と言われています。その現状について以下で詳しく見ていきましょう。
看護助手の離職率の現状
日本看護協会の調査によると、2022年度の看護助手の離職率は正規雇用で13.6%、非正規雇用で25.5%でした。対して、厚生労働省の調査結果によると、2022年の常用労働者のうち、一般労働者の離職率は11.9%、パートタイム労働者の離職率は23.1%です。この結果を踏まえると、看護助手の離職率は他の職種に比べてやや高いといえます。
また、厚生労働省の「厚生労働省職業情報提供サイト」によれば、2023年度の看護助手の有効求人倍率は4.13倍、看護師の有効求人倍率は2.31倍であり、看護師と比較しても看護助手の求人倍率の方が高い現状にあります。
医療・介護における人材の需要が高い中、看護助手も需要が高いものの人材の確保が追いつかず、常に人手不足の状態が続いているといえるでしょう。
厚生労働省職業情報提供サイト(日本版O-NET)「看護助手」
看護助手の人材不足が深刻化している背景
少子高齢化に伴い、2040年には全人口のうち65歳以上の人口が35%ほどに上ると推計されています。生産年齢人口が減少する中で高齢化社会に対応するためには、医療職や介護職などの需要が今後も高まることが予想されます。現在、医療業界全体が働き手不足であり、そのことがさらに看護助手の負担増加の一因となっています。
また、医師や看護師の働き方改革が積極的に取り入れられるようになり、看護師の業務を一部看護助手へシフトしようという流れも看護助手の負担を増しています。医療資格は不要ながら看護師をサポートする看護助手の需要はさらに高まり、今後も減少することはないと考えられます。
看護助手が離職を考える主な理由
それでは、看護助手はどのような理由で職場を離れることを検討するのでしょうか。理由が分かれば、自然と対策が見えてくるはずです。
仕事内容の過酷さ
看護助手の仕事は、患者さんの移動補助や体位変換、ベッドメイキングなど、体力を必要とする業務が多い特徴があります。肉体的に負担と感じる人もいるでしょう。
また、排泄物や痰、嘔吐物などの汚物処理、清掃業務なども看護助手の仕事で、業務は多岐にわたり覚えることも多いです。職場によっては看護助手も夜勤を行うため、ハードな業務内容と夜勤による身体的・精神的負担を感じ、離職を考えてしまう場合もあります。
人間関係の問題
医療現場ではチームワークが不可欠です。人間関係がよくないと、スタッフの労働環境を悪化させる要因となります。
とくに、看護助手は看護師から仕事の指示を受けて業務を行うため、看護師との人間関係に苦痛を感じて離職する人も一定数存在します。看護師は人命に関わる仕事であるため精神的緊張やストレスを抱えやすく、看護助手との人間関係で問題が生じる場合も少なくありません。
給与や待遇への不満
看護助手の給与水準は、他の医療職や介護職と比較してやや低く設定される場合が多いです。業務内容の複雑さや責任の大きさに報酬が見合っていないと感じることは、職員の労働意欲低下を招くことにつながるでしょう。
また、職場にもよりますが、看護助手は正社員として長期勤続しても大幅な給与上昇が見込めないことが多いです。給与や待遇への不満からモチベーションが低下し、離職を考えてしまうケースがあります。
看護助手の離職を防ぐための具体的な5つの対策【医療機関の経営者向け】

医療機関の経営者として、看護助手の離職を防ぐためにできることはいろいろあります。「長く働きやすい職場」と感じてもらえるように、以下のような対策が効果的です。
職場環境の改善
過酷な労働環境は、看護助手をはじめ医療現場のスタッフが離職を考えてしまう大きな要因です。人材確保のためには、短時間勤務ができるようにしたり、有給休暇や育児・介護休暇を取りやすくしたりするなど、柔軟な働き方を実現できるように整備することが求められます。
また、電子カルテやタスク管理システムなどの導入を進めて、今よりも効率的な業務フローを構築することも有効です。看護助手の働きやすさを支えるために、包括的な職場環境改善が急務といえるでしょう。
業務内容の見直し
スタッフが過剰な業務量に追われる状態が続くと、ストレスがたまっていき離職のリスクを高めてしまいます。業務負担を減らすためには業務内容の見直しが大切ですが、看護助手の業務内容だけを見直しても職場環境全体を改善することは難しいです。そのため、医師や看護師の業務も含めて、業務内容を見直していく取り組みが求められます。
たとえば、医師の事務作業の一部を医師事務作業補助者が担うことで、医師の負担を軽減できます。さらに、看護師の間接業務を看護助手が一部担う体制を整えることで、看護師の負担も減らせるでしょう。そのうえで、看護助手が負担していた一部の雑用業務を外部業者へ委託するという方法もよいです。
そのほか、業務の自動化を取り入れて不要な業務を削減することで、業務効率化とスタッフの負担軽減を目指せます。
教育・研修制度の充実
職場において教育制度を充実させる取り組みは、人材不足改善につながる施策です。看護助手をはじめとする職員のスキルを上げることで、生産性が向上し、限られた人材で円滑な業務遂行を可能にします。
院内研修の充実や外部セミナーの参加費用の補助、資格取得支援制度などの導入によって、看護助手にスキルアップの機会を提供できます。さらに、職員のモチベーションアップにもつながり、職場満足度の向上を目指せるでしょう。具体的には、以下のような教育制度を整えることがおすすめです。
【教育・研修制度の例】
・キャリアパスの明確化
・フィードバックと評価制度の確立
・教育ラダー・研修プログラムの整備
・ワークショップ・研修への参加支援
・リーダーシップ、マネジメントスキルの育成
給与・待遇の改善
看護助手の給与水準を引き上げたり、福利厚生の内容を今よりも充実させたりする方法は、人材不足解消に効果的な施策です。努力や貢献が待遇面で適切に評価されることは、看護助手のモチベーションを上げて離職防止につなげる可能性があります。
なお、令和6年度診療報酬改定では、「外来・在宅ベースアップ評価料」や「入院ベースアップ評価料」が新設されました。看護助手の処遇改善を行いたい場合は、これらの届出を行うことがおすすめです。
ただし、人件費を上げることで医療機関の利益を圧迫してしまうと、経営状況を悪化させてしまいます。給与や待遇の改善を考える場合は、収益増加の見通しを立てたり適切な人件費比率を検討したりすることが必要です。
給与での還元が難しい場合は、シフトの自由度を高めたり福利厚生を充実させたりするなど、別の方法を検討するのもよいでしょう。
ワークライフバランスの推進
働き続けやすい環境を整備し、スタッフのワークライフバランスを推進することは、看護助手の離職防止を目指す重要な施策です。看護助手は女性が多いため、とくに育児や介護等のプライベートの事情を抱えやすい傾向があります。シフトや勤務時間をより柔軟に調整できる体制を整えることで、長期的に就業しやすい環境を提供できるでしょう。
他にも、残業時間に制限を作ったり法定労働時間を遵守したりすることも、看護助手スタッフの健康とワークライフバランスを確保するためにも必要なことです。
看護助手が長く働ける職場の6つの特徴

看護助手が長く働ける職場には、とくに上記のような特徴があります。以下で詳しく解説するので、参考にするとよいでしょう。
良好な人間関係ができている
看護助手や看護師など職員間で活発にコミュニケーションが取れている職場は、よい人間関係が構築できているといえます。看護の現場で滞りなく業務を進めるためには、職員同士の声掛けや報連相の徹底など、さまざまな情報を共有するチームワークが重要です。
人間関係が悪く常に緊張感がある職場だと、職員が萎縮し意見を言えなくなってしまうリスクがあります。役職による上下関係は存在するものの、全体的に和やかな雰囲気がある職場は、職員間の親睦を深めやすいです。新規のスタッフもより早く職場に馴染めるようになり、孤立化を防ぐ効果が期待できます。
互いに尊重し合っている
良好な人間関係を築けている職場では、スタッフ同士がお互いを尊重し合う姿勢が見られることも特徴です。医師、看護師、看護助手がともに働く医療現場では、どうしても職種間に上下関係が生じやすくなります。
スタッフ一人ひとりが相手を尊重する意識を持っている職場では、医師や看護師は看護助手が医療現場で大きく貢献していることを実感しており、同じ医療現場で働く対等な存在であると認めています。反対に看護助手も、医師や看護師の仕事の状況を細かく把握して状況を理解できるため、相手を尊重しながらより円滑な連携ができる傾向にあります。
スキルアップを目指せる環境が整っている
長く定着して働いてもらうためには、看護助手としてスキルアップを目指していける職場環境の整備が必要です。たとえば、資格取得制度やキャリアアップ、研修制度があることで、モチベーションの維持につながります。仕事に関する前向きなフィードバックが得られる環境を整えることも定着率を高めるでしょう。
また、そのような環境が整っている職場はキャリアアップを目指す人材が集まる傾向にあり、採用面にも有効です。
失敗をみんなで分かち合う
看護助手として日々注意しながら業務にあたっていても、ミスや失敗は避けられないことがあります。看護助手にとって長く働きやすい職場の場合、スタッフのミスを過度に非難することはなく、「このような事例があるため今後注意しましょう」という形で、前向きに失敗やミスを組織内で共有しています。
看護助手だけでなく、看護師や他のスタッフのミス・失敗についても、同じように前向きな形で共有されることが多いです。失敗を共有できる職場環境は同じミスの再発を防止し、看護助手のスキルアップにつながります。
スタッフ同士が挨拶する
スタッフ同士がお互いに挨拶できる環境は、基本的な人間関係が構築されていると想定できる指標です。挨拶はそれぞれの存在を尊重している証であり、挨拶が活発な環境では職員が互いに声を掛けやすくなります。会話のきっかけにもなるため、より円滑なコミュニケーションが取れるようになるでしょう。
また、挨拶だけでなく、スタッフ同士が日々「ありがとう」と感謝の気持ちを声に出して表現し合う職場風土も、モチベーションの向上に役立ちます。
上司の理解がある
上司が部下に対して配慮できる人物であることは、看護助手にとって働きやすく、人間関係が良好な職場に欠かせない要素です。上司が現場管理をできていない場合、パワハラや現場の問題を見て見ぬふりをしたり、各スタッフの管理ができず1人に業務負担が集中したりする場合もあります。
上司が現場状況を正しく把握し理解していることで、スタッフは人間関係や業務に関して悩みを抱えた際にも上司に意見や相談をしやすいです。職員の仕事量が偏らないよう調整することもあり、一部のスタッフにストレスや不満が集中することを防げます。
看護助手の離職率についてよくある質問
看護助手の離職にお悩みの経営者さまからよく寄せられる質問と回答をまとめました。離職防止対策にお役立てください。
看護助手の離職率が高いのはなぜ?
看護助手の仕事は覚えることが多いうえに責任が大きく、汚物処理や身体介助など肉体的にも精神的にも負担が大きいものです。そのうえ、慢性的な人手不足で常に多忙であり、人間関係のストレスが重なる場合もあります。さらに、看護助手は無資格で就ける職種であるため、医療職の中では給与水準が低いことも離職率を高める一因となっています。
看護助手の離職を防ぐために、どのような対策が効果的?
医療スタッフ全体の業務内容を見直し、過酷な職場環境を改善させる必要があります。タスク管理システムや業務の自動化を導入して業務削減に取り組むのもよいでしょう。また、教育制度の充実や給与・待遇の改善、柔軟なシフト対応によるワークライフバランスの改善も効果的です。
看護助手が長く働ける職場とは、どのような職場?
上記の特徴がある職場は、挨拶をはじめとしたコミュニケーションが活発です。管理職である上司が職場の実情をよく理解しており、仕事量の調整もうまくいっていると考えられます。そのような職場ではミスがあった場合でも速やかに共有されるため、ミスの再発防止に役立ちスキルアップにつながっています。
看護助手の離職率についてよくある質問
看護助手は過酷な仕事内容とその職場環境、また待遇の面から離職率が非常に高い職種です。入職した職員を現場にとどめるためには、業務内容と職場環境の改善がとくに効果的といえます。無駄な業務を削減し「働きやすい職場」と感じてもらえれば、看護助手は仕事にやりがいを持って長く勤務してくれるでしょう。
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