病院のクレーム対応のポイントは?事例や待ち時間対策を病院経営者向けに紹介
多くの患者さんから信頼される病院を目指すためには、よくあるクレーム事例の把握や対応のポイントを理解することが大切です。今回は、病院においてクレームが発生する原因や基本の対応のポイント、事前にできる対策をご紹介します。お悩みの病院経営者さまは、ぜひ参考にしてください。
病院でクレームが発生する原因・具体的な事例
病院でクレームが発生する主な原因を解説します。事例や最終的に目指すべき対応の目標と併せてご確認ください。
病院でクレームが発生する主な原因
・患者さんに不信感を抱かせる発言や行動
病院でのクレームは、患者さんやご家族の不満・不安から生じる場合が多いです。また、症状や治療方針を患者さんに理解してもらえないと、ご家族も巻き込んだクレームに発展する可能性もあります。
いずれの場合も、患者さまやご家族の気持ちを第一に考えることが大切です。クレームを単なる怒りと捉えず、病院サービス向上のための重要なフィードバックであると意識しましょう。
病院で発生しやすいクレームの事例
・診療の際に説明が不足している
・スタッフの態度や対応が雑
待ち時間の長さは、病院のクレームの中でも大きな原因のひとつです。「先に受付したのに順番を飛ばされた」「ずっと待っているのに呼ばれない」など、患者さんが不満を感じるとクレームにつながります。
また、医師の診療に対する説明不足も、患者さんを不安に感じさせてしまうでしょう。さらに、スタッフの態度や対応も重要なクレームの対象です。医療機関の現場は常に忙しいですが、患者さんの気持ちに寄り添うことを忘れてはいけません。
クレーム対応において目指すべき目標
・クレームとペイシェントハラスメント(ペイハラ)の線引をする
クレーム対応の目標は、患者さんの不満解消と信頼回復です。患者さんの声に真摯に耳を傾け、丁寧に対応する姿勢が求められます。クレームを真摯に受け止め、改善策の実施と結果報告を行えば、信頼関係を再構築できるチャンスが巡ってくるでしょう。
また、クレーム対応とペイハラの見極めも重要です。患者さんや家族による常識を超えた要求や不適切な言動はペイハラにあたります。具体的には、暴力、脅迫、中傷、執拗な要求、長時間の居座りなどが含まれます。
これらの行為は、医療従事者の尊厳を傷つけ、職場環境や診療環境を悪化させる重大な問題です。そのため全ての意見を真摯に受け入れるだけでなく、クレームとペイハラとの線引を厳密に行い、毅然とした態度で対処することが求められています。
病院におけるクレーム対応【基本の手順】
病院におけるクレーム対応をする際は、基本の手順を把握することが重要です。大きく3つのステップに分けて解説します。
1.クレームの内容を詳細に確認する
クレームの内容は正確に記録し、後の対応に活用すると効果的です。クレームを受ける際は、患者さんの感情に配慮しつつ内容をしっかり把握しましょう。冷静かつ丁寧に対応すれば、患者さんが訴える問題点が明確になります。
患者さんにつられて感情的にならず、クレームの背景にある患者さんのニーズを理解する姿勢が重要です。その際は、相手の怒りの感情を増幅させるD言葉(だから、ですから、でも…など)は避けて対応するよう注意しましょう。
2.心をこめて謝罪をする
形式的な謝罪ではなく、患者さんの感情に寄り添った心からの謝罪が信頼回復につながります。謝罪は問題解決の第一歩であり、信頼関係構築の重要な機会です。
たとえ不服であっても、言い返したり言い訳をしたりしてはいけません。自分の非を認める姿勢が、患者さんとの関係改善に効果的です。
ただし、むやみな謝罪はかえって火種を大きくする場合があります。事前に事実確認を行い、謝罪を行う必要があるかどうかを含めて、謝罪のポイントを明確にすることが重要です。
3.解決姿勢と対策案を提示する
ただ謝るだけでなく、可能であれば、具体的なアクションプランを示すことで患者さんの信頼を取り戻せます。たとえば、「患者さんの待ち時間を短縮するために、今後は予約制度の導入を検討します」など、具体的な改善策を伝えると納得してもらいやすいです。患者さんの意見を取り入れた再発防止策や、改善計画を明確に説明するよう心がけましょう。
ただし、「検討します」で終えたときにその改善策が実行できないと、新たなクレームに発展する可能性があります。安易な約束はしないことが大切です。
また、クレームに対して改善を積み重ねることは、病院全体のサービス向上にもつながります。
病院でクレームが発生した際の7つの対応ポイント
・個室に案内して対応する
・やりとりを正確に記録する
・患者さんの話を傾聴し、共感を示す
・すべての患者さんに一貫した対応をとる
・病院内でクレームの事例を共有する
・必要な場合は弁護士や警察に相談する
病院でクレームが発生した際は、以下で解説するポイントを意識して対応するとよいでしょう。7つご紹介しますが、取り入れやすいものからぜひ参考にしてください。
複数人で対応にあたる
患者さんからのクレームを受けるときは、チームで対応することで一人あたりの負担が軽減されます。一人は聞き役に、もう一人は冷静に状況を整理する役など、効果的に話を聞ける体制を整えましょう。
また、複数人での対応によって、さまざまな視点から問題を分析し適切な解決策を見出せます。日頃の、上司や同僚との連携と臨機応変な役割分担が重要です。
個室に案内して対応する
個室で対応することにより、ほかの患者さんやスタッフへの影響を最小限に抑えられます。プライバシーが確保された環境だと患者さんも安心でき、感情を落ち着かせて話せる点も利点です。
また、静かな環境だとより深いコミュニケーションができます。クレームを受けた際は、患者さんの様子を伺いながら冷静に誘導しましょう。
やりとりを正確に記録する
クレーム内容と対応を記録することで、後の確認や分析が可能です。記録がないと、「こう言ってた!」「そんな話は聞いていない!」と揉める原因になりかねません。
また、しっかり記録することで、患者さんにとっても話を聞いてもらえているという安心感につながります。さらに、正確な記録は法的問題が生じた際の証拠としても活用できるため重要です。
患者さんの話を傾聴し、共感を示す
傾聴と共感は、患者さんとの信頼関係を築くうえで非常に重要です。患者さんの話をよく聞き、適切なタイミングで「そうですよね」などと相槌を打ちましょう。
クレームの大半は感情の問題であるため、患者さんの感情を受け止められ、解決に向かいやすいです。また、適切な質問は、患者さんのニーズの正確な把握にもつながります。
なお、この場面でも、D言葉(だから、ですから、でも…など)は避けて対応した方がよいでしょう。
すべての患者さんに一貫した対応をとる
特別扱いは、ほかの患者さんやスタッフの不公平感を招く可能性があるため注意が必要です。一度でも特別扱いをしてしまうと、「あの人はこうだったのに!」とさらなるクレームの原因になりかねません。
すべての患者さんに一貫した対応をし、公平性を保ちましょう。また、特別扱いを避けることで、クレームがエスカレートするリスクも防げます。
病院内でクレームの事例を共有する
クレームが発生した場合は、病院内で内容を共有すると再発防止策を講じやすいです。スタッフ全員が問題点を認識することで、さまざまな意見を出しやすく改善が促進されます。クレーム情報を共有する際はプライバシーに配慮して、必要な情報のみを適切に伝えましょう。
必要な場合は弁護士や警察に相談する
法的問題やスタッフの安全に関わる場合は、専門家の助言が不可欠です。弁護士や警察に相談すると、より適切な対応と法的リスクの軽減ができます。
重大なクレームに対しては、早期に専門家に相談することが重要です。また、暴言や暴力など明らかに度を超えたクレームに対しては、スタッフを守るためにも法的措置を検討しましょう。
医師法の応召義務とは?「正当な理由」に該当するケース
応召義務とは、医師が診療依頼を拒否せず応じる義務を意味します。そのため「正当な理由」がある場合のみ、診療依頼の拒否が認められます。
主な「正当な理由」は、診療時間外・勤務時間外の診察、医療費不払いなどです。そのほか、クレームや苦情が原因で、患者さんとの信頼関係を築くことが困難な場合も認められる可能性があります。ただし、場合によるため、病院側は弁護士に相談するなど慎重に対応を検討しましょう。
クレーム対応に備えてやっておくべきこと【病院経営者向け】
クレームはいつ起こるか予測できない問題です。日頃からクレーム対応に備えておくと、焦らずに対応できます。
クレーム発生時のマニュアルを作成する
事前にマニュアルを作成することで、統一した対応が可能です。クレームの内容ごとに、受付から解決までの手順を詳細に記載しておきましょう。
また、マニュアルには各段階での注意点や重要ポイントを明記するとわかりやすいです。さらに、定期的な見直しで最新情報や改善点を反映させれば、スムーズに対応できます。
職員へマニュアルの周知・研修を徹底する
作成したマニュアルは、病院で働く職員全員が理解できるように周知しましょう。また、マニュアルに則ってクレーム発生時の対応を学ぶ研修を行うと効果的です。
さらに、普段から接遇に関する研修やチェックなどを実施することで、よりよいクレーム対応ができます。職員によって対応の差が生じないために、全員の認識を統一するよう心がけましょう。
クレームを予防・削減するための改善を行う
クレームを削減するためには、患者さんの不満点を洗い出し、改善策を講じることが重要です。一つ一つのクレームには、病院を改善していくためのヒントがあります。
そのほか、定期的な「患者さん満足度調査」のようなアンケートの実施も効果的です。クレームが発生する原因を理解し、よりよい環境づくりに活かしていきましょう。
必見!病院の待ち時間に対するクレームへの予防方法
厚生労働省「令和2(2020)年受療行動調査(確定数)の概況」
厚生労働省の令和2年の調査によると、待ち時間に「不満」を感じる患者さんは24.1%で、全体の3分の1もいる結果になりました。待ち時間の短縮のためには、オペレーションの改善やスタッフの教育などがあります。
また、事前予約できるシステムや電子カルテの導入など、システム面からの対応も可能です。そのほか、待ち時間の理由を明確にして患者さんの理解を得たり、静かで落ち着ける待機場所を作ったりなどの心理的な配慮も効果があります。
ソラストの医療機関経営支援サービスを活用すれば、システムの導入や求人によるスタッフの増員が可能です。人員確保によって、病院の待ち時間対策や院内における業務効率化を効果的に行えます。
クレームは病院を改善するためのヒントに活かす
クレームが発生したら患者さんの話をしっかり聞き、原因と改善策を明確にしましょう。その際は冷静に落ち着いて対応することが重要です。また、クレームに対して悪いイメージを持つのではなく、病院を改善するためのヒントをいただいているという意識を持ちましょう。
ソラストでは、医療機関経営支援サービスを提供しています。より万全なクレーム対応を行うためには、病院の人員確保が重要です。医療分野に特化した人材の派遣・紹介を行っているため、お悩みの病院経営者さまはぜひ一度ご相談ください。