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医療事務

オンライン診療とは?導入のメリット・デメリット・注意点や医療機関ができる工夫

公開日/2024.10.01 更新日/2024.09.30
目次

オンライン診療の導入を検討している病院経営者さまや開業医さまに向けて、導入のメリット・デメリットを解説します。また、オンライン診療を導入する際の注意点や準備が必要なもの、オンライン診療によって患者さんによい医療を提供するための方法もご紹介します。

オンライン診療とは?

遠隔医療のうち、医師-患者間において、情報通信機器を通して、患者の診察及び診断を行い診断結果の伝達や処方等の診療行為を、リアルタイムにより行う行為。

引用:厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」

オンライン診療とは、厚生労働省によって上記のように定義されています。一般的には、インターネットを利用して、医師が遠隔地にいる患者さんの診察を行うサービスを指します。

オンライン診療によって患者さんは医療機関に出向かなくても、自宅などから医師の診察を受けられます。さまざまなデバイスに対応しており、スマートフォンやタブレットなどでお互いの顔を見ながら話すことが可能です。

医療機関にとっても、オンライン診療は新しい患者層を開拓し、収益を増加させるきっかけになります。このように、オンライン診療は患者さんと医療機関の双方にメリットがあるサービスです。

オンライン診療が推進される背景

オンライン診療は、情報通信技術の発展や地域の医療提供体制・患者さんが求める医療ニーズの変化などが影響し、年々需要が高まっています。とくに、2020年に新型コロナウイルス感染症が流行したことをきっかけに、より活用される場が広がりました。

オンライン以外の診療の種類

外来診療 医療機関に通院して診療を受ける
入院診療 医療機関の病室に留まって治療を受ける
在宅診療 居宅等において診療を受ける

外来診療はもっとも一般的な診療方法です。患者さんが直接医療機関に行き、医師が対面で診療を行います。

入院診療は、入院患者さんに対して行う診療です。在宅診療(訪問診療)は、医師や看護師が患者さんの自宅を訪れて診察や治療を行います。

オンライン診療を提供する7つのメリット

オンライン診療を提供すると、さまざまなメリットがあります。オンライン診療の導入を検討している病院経営者さま、開業医さまは、ぜひ参考にしてください。

患者さんの居住地や状況を問わず医療を提供できる

オンライン診療の体制を整えると、遠方に住む患者さんにも医療を提供できます。患者さんの状況に合わせて、柔軟な医療提供の実現が可能です。

自宅から医療機関までの移動が難しい高齢の患者さんや障がいを抱える患者さんなど、医療サービスを求める人は大勢いらっしゃいます。場所や状況を問わず医療を提供できるのは、オンライン診療ならではのメリットです。

患者さんの待ち時間や通院の負担を減らせる

オンライン診療は、事前に予約を取れるため待ち時間の削減が可能です。通院の負担も軽減され、交通手段が限られている地域や交通渋滞が頻発する都市部に住む患者さんの利便性も向上します。

オンライン診療では、患者さんにストレスがかかりにくい形で医療を提供できるのが大きなメリットです。

患者さんの治療継続率向上を目指せる

外来診療の場合、患者さんが引っ越してしまうと、かかりつけ医が継続して診療を行うことが困難になります。オンライン診療であれば、場所を問わないため診療の継続が可能です。ただし、オンライン診療は、原則対面診療と組み合わせて実施することが求められています。

そのほか、仕事やライフスタイルの忙しさなどを理由に、通院が難しい人にも医療を提供しやすくなります。

処方箋の発行や薬の郵送も対応できる

オンライン診療は、診療だけでなく薬の処方もオンライン上で手続きが可能です。患者さんの自宅付近の調剤薬局に処方箋を発行したり、自宅に郵送で薬を届けたりできます。薬の受け取りがよりスムーズになるのも、オンライン診療のメリットです。

受付や事務業務の効率化を図れる

オンライン診療では、従来の対面診療で必要だった患者さんの受付や予約管理、会計処理などの事務作業の負担を軽減できます。医療スタッフの負担が減ると、より多くの患者さんに迅速かつ適切な医療の提供が可能です。

また、患者さんの待ち時間を気にする必要がないため、事務処理を丁寧に行えます。事務側のミスが減るのもメリットのひとつです。

院内の感染リスクの低減につながる

感染症が流行する時期やパンデミックの際には、対面での診療を避けることで患者さんと医療スタッフの安全確保につながります。院内における感染症の拡大を防ぎ、医療機関の運営を安定させられるのもオンライン診療のメリットです。

診療費の未収金を防げる

オンライン診療の導入は、診療費の未収金を防ぐことにも役立ちます。一般的にオンライン診療は、クレジットカードや電子マネーといったオンライン決済にのみ対応しているケースが多いです。

支払い手数料は必要ですが、医療機関の窓口における現金払いに比べると、クレジットカードや電子マネーなどの支払いの方が未収金のリスクが下がります。

オンライン診療の5つの課題・デメリット

メリットが多いオンライン診療ですが、課題やデメリットもあります。オンライン診療を導入する際は、しっかり把握しておきましょう。

初診は原則かかりつけ医が対面診療を行う必要がある

厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」によると、初診は原則「かかりつけの医師」が行うように定められています。オンライン診療を提供できるのも、日頃から対面診療を重ねているなどの条件があるため注意しましょう。

また、明確なルールではありませんが、医療機関として疾病の見落としや誤診がないように努める必要があります。

得られる情報や対応できる症状・疾患が限られている

オンライン診療では、触診や聴診ができないため、受け取れる診断情報が少ないです。そのため、すべての症状・疾患の診療ができるわけではありません。対面診療が必要とされる場合は、患者さんに受診を依頼する必要があります。

一般社団法人日本医学会連合が定めた「⽇本医学会連合 オンライン診療の初診に関する提⾔」では、「オンライン診療の初診に適さない症状」などが記載されているため、事前に確認しておきましょう。

【初診からのオンライン診療に適さない症状の例】

・呼吸困難
・意識障害
・骨折を疑う外傷 など

ツールの準備やセキュリティ対策が欠かせない

オンライン診療の導入には、ツールの準備やセキュリティ対策が必須です。これらを怠ってしまうと、患者さんの個人情報が流出する危険性があります。

万全なセキュリティ対策を行うには、高品質な通信環境や専用のアプリケーションなどが必要です。導入にはコストと時間がかかるため、運用資金やサービス提供開始時期は余裕を持って計画しましょう。

対面診療よりも収益が減りやすい

オンライン診療の診療報酬(初診料)は、対面診療よりも低く設定されています。導入には初期投資も必要であるため、収益面を圧迫する可能性がある点には注意しましょう。

しかし、オンライン診療を導入することによって、患者さんを確保できます。状況によっては収益面の改善が見込めるというプラスの影響をもたらす可能性があります。

なお、令和6年の診療報酬改定では、「看護師等遠隔診療補助加算」が新設されました。看護師と一緒にいる患者さんが、へき地診療所もしくはへき地医療拠点病院の医師によるオンライン診療を受ける場合は算定可能です。

さらに、情報通信機器を用いた通院精神療法に係る評価も新設されました。オンライン診療を導入する際は、これらの情報もしっかり把握しておきましょう。

【オンライン診療の診療報酬について】

・初診料:253点(2024年度の外来診療:291点)
・再診料:75点(2024年度の外来診療:75点)
      一般病床200床以上の医療機関の場合:外来診療料76点
      情報通信機器を用いた診療の場合:75点

※令和6年9月現在

急変時や検査が必要なときに早急な対応ができない

オンライン診療では、急変時や検査が必要なときに早急な対応が難しいのが大きな課題です。オンライン診療の最中に検査が必要、そのほかの対応が必要と判断できる場合は、対面診療に移行する場合もあります。オンライン診療をする際は、限られた情報のなかで患者さんの容態を見極め、適切な対処を行うことが重要です。

オンライン診療に必要なもの・提供の流れ【医療機関向け】

オンライン診療に必要なものを紹介します。また、実際にオンライン診療を提供する際の流れも解説するため、ぜひ参考にしてください。

オンライン診療の提供に必要なもの

・インターネット環境
・PC・タブレットなどのデバイス
・オンライン診療のソフトウェア
・マイク、Webカメラ

オンライン診療を行うためには、通信速度が安定したインターネット環境が不可欠です。診療中に接続が途切れると、患者さんとのコミュニケーションが円滑に進まなくなり診療に支障をきたします。そのため、信頼性の高いインターネット回線を選びましょう。

また、専用のアプリケーションやソフトウェアも必要です。種類によって、診療の予約管理・ビデオ通話・電子カルテの共有など、多くの機能が備わっています。オンライン診療をスムーズに行うのに大変便利なため、必要に応じて選択してください。

そのほか、PC・タブレット・Webカメラ・マイクなどのツールも用意しましょう。

オンライン診療を提供する流れ

1.初診(原則医療機関にて対面診療)
2.定期診察(対面診療)
3.オンライン診療の実施

初診の場合でも、医療情報の共有や診療前相談を行うことなど指針に基づく診療を行う場合は、算定が可能です。その後、定期診療(対面診療)を重ねたうえで、一部をオンライン診療に移行しましょう。診療当日は、指定の時間にビデオ通話を通じて診療を開始してください。

診療中は、患者さんの症状や質問に応じて適切なアドバイスや治療を提供するよう心がけましょう。診療後は、処方箋の発行やフォローアップの手続きを行い、必要に応じて次回の予約を設定します。オンライン診療の流れをしっかり把握し、患者さんにスムーズな医療を提供することが重要です。

オンライン診療を導入する際の注意点【医療機関向け】

・医師は厚生労働省が定める研修を受講する
・患者さんに事前にオンライン診療の注意事項を説明する
・初診オンライン診療は原則かかりつけの患者さんのみ行う
・オンライン診療が適さないと判断した場合は対面診療に移行する

オンライン診療を導入する際は、対応する医師は厚生労働省が定めている研修を受ける必要があります。また、「情報通信機器を用いた診療」施設基準の届出も必要です。事前に情報を確認し、忘れないよう注意しましょう。

また、オンライン診療を行う際は、診療計画書や同意書等を作成して患者さんに注意事項の説明をしてください。

そのほか、オンライン診療の最中であっても、対面診療が必要と判断できる場合は速やかに移行する必要があります。常に患者さんを第一に考え、オンライン診療であっても患者さんが安心してサポートを受けられるように心がけましょう。

オンライン診療で患者さんによりよい医療を提供するには

オンライン診療で患者さんによりよい医療を提供するためには、さまざまな工夫が必要です。いくつか例を紹介するため、ぜひ取り入れてみてください。

対面診療とバランスよく組み合わせる

オンライン診療だけでは対応できない症状や疾患があるため、適切なタイミングで対面診療を取り入れましょう。オンライン診療だけでなく、状況に合わせて対面診療と組み合わせることが重要です。

自院の診療科目・患者層からオンライン診療のニーズを把握する

医療機関の診療科目、メインの患者さんの層によっては、オンライン診療の提供が難しいケースもあります。たとえば、オンライン診療に適していない疾患が多い場合、高齢の患者さんなどオンラインツールの利用がかえって不便に感じる人が多い場合などです。

自院の状況に合わせて、オンライン診療を導入するかどうかを検討しましょう。大切なのは、患者さんのニーズに応えることです。

オンライン服薬指導に対応している調剤薬局と連携する

患者さんの利便性向上のために、オンライン服薬指導に対応できる調剤薬局との連携も重要です。処方された薬のことを気軽に質問できるため、患者さんも安心感を得られます。オンライン診療を導入する際は、円滑な服薬指導・処方のために、薬剤師との情報共有も欠かせません。

オンライン診療を提供していることを周知する

オンライン診療の提供を開始したら、医療機関のWebサイトなどで情報を周知しましょう。SNSを運用している場合は、リアルタイムで情報を発信できるため、患者さんの利便性向上にもつながります。多くの患者さんに利用してもらうためには、サービス開始を知らせることが重要です。

トラブル発生時の対応マニュアルを用意しておく

万が一、通信の不具合等でオンライン診療に支障が出た場合に備え、対応方法を定めておくと安心です。導入するアプリケーションやソフトウェアによって対処法が異なるため、事前に確認しマニュアルを用意しておきましょう。医療スタッフだけでなく、患者さんにも説明しておくことで、よりよい医療の提供につながります。

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オンライン診療に関するQ&A

ここでは、オンライン診療に関する疑問をQ&A形式で解説します。ここではとくに患者さんの目線に立った疑問を取り上げました。

Q.オンライン診療の患者さんにとってのメリットは?

A.自宅にいながら診療を受けられるため、通院時間や手間が省けます。

オンライン診療は、場所や状況を問わず医療サポートを受けられるのが一番の魅力です。通院時間や待ち時間を削減できるため、ストレス軽減にもつながります。また、院内感染のリスクを抑えられるのもメリットです。

【患者さんにとってのオンライン診療のメリット】

・住んでいる場所に関わらず診療を受けられる
・通院時間や待ち時間を削減できる
・院内感染のリスクを抑えられる

Q.オンライン診療の患者さんにとってのデメリットは?

A.緊急時や重篤な疾患の場合、オンライン診療では対応が難しいでしょう。

オンライン診療は、対面診療よりも診療精度が低い可能性や、緊急時の対応が難しい点がデメリットです。また、症状によっては対面診療を促すケースもあります。

そのほか、デバイスやオンライン診療用システムの扱いに慣れる必要があったり、原則として初診では利用できなかったりする点には注意が必要です。

【患者さんにとってのオンライン診療のデメリット】

・対面診療よりも診療制度が低い可能性がある
・緊急時や重篤な症状だと対応が難しく、原則初診では利用できない
・通信機器やシステムの操作・扱いに慣れる必要がある

Q.オンライン診療を受ける際、患者さんはどんな準備が必要?

A.通信機器やオンライン診療用システムのインストールが必要です。

オンライン診療を受ける際は、インターネット環境の整備やスマートフォン・PCなどのデバイスが必要です。また、医療機関から指定されたオンライン診療システムは、患者さんのデバイスにもインストールする必要があります。

【患者さんがオンライン診療を受ける際の準備】

・インターネット回線
・スマートフォンやPC、タブレットなどのデバイス
・本人確認書類や保険証

Q.オンライン診療の料金は対面診療と異なる?

通常、オンライン診療の方が対面診療よりも診療報酬の評価が低いです。しかしオンライン診療では、情報通信機器の使用に係る自費診療分が発生するため、通常の外来診療より負担が大きくなると思われます。

ただし、料金は医療機関によって異なるため注意が必要です。

オンライン診療について理解し、患者さんの健康に貢献しよう

オンライン診療は、さまざまな事情で通院が難しい患者さんにとって大変便利なサービスです。患者さんと医療機関側の双方に、メリット・デメリットがあるため、導入する際はしっかり理解しましょう。患者さんのニーズに応えることで、よりよい医療の提供につながります。

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著者プロフィール

著者:ソラストオンライン
サイト管理人
お役に立つ情報を提供しています。

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