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医療DXとは?政府の施策や推進のメリット・導入に向けて病院経営者ができること

公開日/2024.09.03 更新日/2024.09.02

医療業界におけるDX化は、将来迎える超高齢社会に対応するため国を上げて推進されています。しかし、医療DXを進めるために何から準備してよいかわからない方も多いのが実情です。本記事では、病院経営者様や開業医様に向けて、医療DX推進に向けた具体的な施策や推進するメリット、導入に必要な準備・行動をご紹介します。

医療DXとは?

医療DXとは、デジタル技術の導入・活用によって医療・保健・介護の分野で発生するデータや情報を活かし、より質の高いサービスを提供できるように社会や生活の形を変える取り組みです。

医療DXとは、デジタル技術を活用して医療・保健・介護業界全体のサービスや業務のプロセスを革新する取り組み全般を指します。各分野で発生する情報やデータを集積する基盤を整備し、国民の発病予防や健康増進などに役立てようとする取り組みです。

医療分野におけるDXの代表例として、電子カルテの導入やオンライン資格確認システム、遠隔医療などが挙げられます。医療DXを推進することで、医療従事者の負担軽減や業務の効率化、患者さんに提供するサービスの質向上などの実現が可能です。

なお、厚生労働省は、医療DXについて以下の通り定義しています。

医療DXとは、保健・医療・介護の各段階(疾病の発症予防、受診、診察・治療・薬剤処方、診断書等の作成、診療報酬の請求、医療介護の連携によるケア、地域医療連携、研究開発など)において発生する情報やデータを、全体最適された基盤(クラウドなど)を通して、保健・医療や介護関係者の業務やシステム、データ保存の外部化・共通化・標準化を図り、国民自身の予防を促進し、より良質な医療やケアを受けられるように、社会や生活の形を変えることです。

引用:厚生労働省「医療DXについて」

医療DXと医療ICTの違い

医療DX デジタル技術を活用してサービスの質や業務効率を向上させ、社会や生活の形を根本的に変革する取り組み
医療ICT 情報通信技術(ICT)を用いて業務の効率化を目指す取り組み

DXは「デジタル トランスフォーメーション」の頭文字をとった言葉です。医療DXと使う場合は、デジタル技術を活用して、医療業界全体のサービス・業務の流れを革新するための取り組みを指します。

対してICTは「インフォメーション アンド コミュニケーション テクノロジー」の頭文字をとった言葉です。「情報伝達技術」を意味し、医療業界においては電子カルテやオンライン診療システムが該当します。医療ICTはこれらのツールを使い、業務効率を上げる取り組みです。

医療DXは医療ICTのさらに先を見据えた取り組みであり、デジタル技術を活用して医療や社会全体の変革を目的としている点に違いがあります。逆に、医療ICTは医療DXを実現するための取り組みの一部と言えましょう。

医療DXを推進する目的

①国民の更なる健康増進
②切れ目なくより質の高い医療等の効率的な提供
③医療機関等の業務効率化
④システム人材等の有効活用
⑤医療情報の二次利用の環境整備

引用:厚生労働省「医療DXについて」

厚生労働省が掲げる医療DXを推進する目的は、大きく上記の5つです。医療DXを進めることで、インターネットを通じて情報やデータの管理・共有がしやすくなります。

医療・介護・保健の各分野でスムーズな情報共有・連携ができ、一層患者さんに寄り添った治療計画の立案やケアの実施を目指せるでしょう。診断や治療精度の向上が期待でき、患者さんに対するケアをより適切に行えるようになります。患者さん本人も、集約されたデータを自分自身の健康管理に役立てられるでしょう。

また、DX化によって医療従事者の業務効率も高まります。医療現場の負担軽減や業務の迅速化といった、働き手側も多くのメリットを享受できるでしょう。<

医療DXが必要とされる理由

・少子高齢化に伴い担い手が不足している
・医療従事者の長時間労働・業務負担が問題になっている
・他業界に比べてデジタル化が遅れている

高齢化に伴い求められる医療サービスの需要が増加・多様化している一方で、少子化も進んでいるため医療の担い手自体は不足傾向にあります。地域によって医師数の偏りもあり、必要な場所で求められるサービスを提供できなくなる可能性が考えられます。

また、人材不足により医療従事者の業務負担がさらに多くなり、長時間労働につながる悪循環を招いてしまいます。さらに、医療業界は他の業界に比べてDX化があまり進んでおらず、偏在があることも課題の一つです。

このような背景から、医療DXを進める動きが加速しています。医療DXの推進によって、医療従事者の負担軽減や業務効率化を目指せるでしょう。

政府が掲げる「医療DX令和ビジョン2030」

「医療DX令和ビジョン2030」は、医療DXを推進するための基本方針を定めたものです。厚生労働省が中心となり、2022年に策定されました。

「医療DX令和ビジョン2030」では、全国医療情報プラットフォームの創設や診療報酬改定など3つの柱を掲げ、これらを基盤に各種施策を展開しながら医療DXの実現を目指していくと定めています。日本政府が現在進めている具体的な施策については、次章でご確認ください。

【医療DXの3つの柱】

・全国医療情報プラットフォームの創設
・電子カルテ情報の標準化等
・診療報酬改定DX

医療DX推進に向けた具体的な5つの施策

「医療DX令和ビジョン2030」の3つの柱をもとに、日本政府が進める医療DXの詳しい施策を5つ紹介します。

全国医療情報プラットフォームの創設

全国医療情報プラットフォームとは、保健、医療、介護の分野で患者さんや利用者さんの情報を共有できるシステムです。医療DXの推進によってプラットフォームの活用が進むと、各分野間で円滑な情報共有ができるようになり、提供する医療・介護サービスの質向上や医療機関受診のサポートなどに活用できます。

患者さん情報を一元管理することで、過去の既往歴などから予想される疾患を判断したり、使用中の薬剤情報をすぐに確認できたりするなど、多くのメリットがあります。要介護認定状況の確認や特定健診等の結果を管理するといった使い方も可能です。

マイナンバーカードによるオンライン資格確認の導入

医療DX推進の一環として、現在発行されている健康保険証は2024年12月2日をもって廃止が決まっています。廃止以降はマイナンバーカードと一体化させて、オンライン上で資格確認を行えるようになります。

オンライン資格確認の導入が進むことで、全国医療情報プラットフォームの中で、患者さんの処方・調剤情報や診療・健診情報などを一元管理でき、医療の質や業務効率の向上などが期待できるでしょう。

電子カルテ情報の標準化

電子カルテはすでに各医療機関で導入が進んでいます。しかし現状は、医療機関によって使用しているシステムが異なり、登録されている情報についても差異が生まれている課題が存在しています。

この課題を解決するために、日本政府が中心となって電子カルテに登録する項目などの標準化を進めています。全国の医療機関で統一されたシステムで電子カルテ情報を記録できれば、よりスムーズに他の医療機関や施設と情報共有ができるようになります。

電子処方箋

処方箋の電子化は、全国医療情報プラットフォームの構築と並行して進められている医療DXの一つです。処方箋の情報をどの医療機関でも迅速化かつ正確にアクセスできるようにすることで、医師や薬剤師が投薬情報を正確に把握できるようになります。

現在使用中の薬も確認できるため、重複投薬などの医療事故の発生を防止できるでしょう。また、投薬情報を踏まえて患者さん自身も自分の健康管理に役立てられます。

診療報酬改定DX

診療報酬改定DXとは、病院、診療所、薬局、訪問看護ステーションにおける、医療従事者の業務負担を減らすための取り組みです。診療報酬の算定や患者さんが負担する医療費を計算できる、全国共通の電子計算プログラムの開発・運用や、標準様式のアプリ化・データ連携などを行います。

また、医療従事者の業務負担が同じ時期に集中しすぎないよう、2年に1度改定される診療報酬改定の施行日を後ろ倒しにする取り組みも盛り込まれています。

医療DXがもたらす4つのメリット

医療DXを推進することは、患者さんだけでなく働くスタッフや病院経営者にも大きなメリットがあります。どのようなメリットがあるのか見ていきましょう。

患者体験の向上

医療DXの推進により、窓口での受付や診療などさまざまな場面で、患者体験が大幅に向上することが期待できます。オンライン予約システムの導入や電子カルテの活用が進めば、患者さんの待ち時間が短縮されて、診療が円滑に進められるでしょう。

また、医療DXの推進によって遠隔診療が今より進めば、自宅にいながら専門医の診察を受けることも可能です。離島や地方などの医療問題の解決にもつながります。患者体験を向上させることで病院の評判も高まり、収益の面でもプラスに働くでしょう。

医療品質の向上

医療DXが進み、さまざまな医療機関のデータをクラウド上で共有できれば、医師はより正確かつ迅速に患者さんの診療ができるようになります。全国医療情報プラットフォームを通して患者さんの過去の診療履歴やアレルギー情報などを網羅的に確認できるため、診療の精度も向上するでしょう。アクセスできる情報が増えるほど、医療ミスのリスクも減少します。

また、オンライン上で情報共有をするため紙面でのやり取りは不要です。書類としての保存・管理する手間も削減できるでしょう。

コスト削減・業務効率化

医療DXの推進は、コスト削減と医療従事者の業務効率化にも大きな効果を発揮します。電子カルテやオンライン資格確認システムの導入により、紙ベースの管理が不要になり、運用コストを削減可能です。

電子処方箋を活用すれば、薬剤師との連携もスムーズになり、業務の効率化につながります。単純な事務作業が効率化されることにより、医療スタッフはより専門的な業務や患者さん対応に集中できるでしょう。

収支状況の改善

医療DXの実施によって業務の効率化が進むと、医療機関の収支状況改善によい効果が期待できます。医療機関の収入は診療報酬の点数によって変わりますが、請求できる金額は決まっています。各業務に必要な工数を削減できないと、利益アップを目指すことは不可能です。

医療DXの推進によって業務の効率化が実現すると、医師や看護師、事務職員などが行う業務の工数を削減できるようになります。対応できる患者さんの数が増えて利益率が高まり、結果として収支状況の改善に役立ちます。

医療DXの3つの課題・デメリット

医療DXにはメリットも多い一方で、注意すべきデメリットも存在します。どのような点に課題があるのか、事前に確認をしておきましょう。

セキュリティ対策と導入コストの問題

医療DXの根幹はインターネットを利用した情報共有です。患者さんの個人情報や医療データがデジタル化されるため、サイバー攻撃やデータ漏洩のリスクが懸念されます。トラブルを回避するため、十分なセキュリティ対策が欠かせません。

また、システムの導入やセキュリティ対策の整備には多大な初期投資が必要です。導入したツールを活用するためには、スタッフに運用に関する教育を行う必要もあります。中小規模の医療機関にとっては、初期投資が大きな負担となる場合もあるでしょう。

DX化に対応できる人材の育成が必要

医療DXは導入して終わりではなく、実際の業務でしっかりと運用されることがもっとも重要です。導入・教育・運用の計画をしっかりと立てて、医療機関で働くスタッフ全員が導入したシステムを扱えるよう教育する必要があります。

人材の育成には時間とコストがかかるため、計画的な取り組みを行いましょう。また、システムのアップデートなどにも対応できるよう、定期的な研修や勉強会などの実施も大切す。

医療DXを活用できる患者層の格差

患者さんの層によっては、医療DXを便利と感じられる人と不便に感じてしまう人とで分かれる可能性があります。とくに高齢者やデジタル技術に慣れていない患者さんにとっては、新しいシステムの利用が困難と感じることが多いです。

また、医療従事者の中にも新しい技術に対する抵抗感を持つ人が一定数存在するでしょう。病院へ訪れる患者さんの層や働くスタッフの声を意識しながら、より使いやすくシステムの運用体制を整備することが重要です。

医療DXの導入を進めるために【病院経営者向け】

医療DXを円滑に推進するために、押さえておきたいポイントを紹介します。病院経営者様、開業医様はぜひ参考にしてください。

政府の動向や施策を都度確認する

政府は医療分野のDXを加速させるため、さまざまな政策や施策を打ち出しています。現行では、健康保険証を2024年12月で廃止し、マイナンバーカードでのオンライン資格確認に一本化されます。

医療DXに対する考え方や進め方は、国の政策に左右される事項が多いため、最新の情報を的確に把握して、自院で行うべき対応や準備の洗い出しを行いましょう。新たな施策や方針が決まる可能性にも備えて、心構えが必要です。

医療DX導入に使える補助金制度を活用する

国は、医療DXの導入にかかったコストの一部の補助を受けられる補助金制度を用意しています。医療DXの導入には多くのコストがかかるため、各制度をうまく活用することで経費の削減が可能です。

補助金等を利用する際には細かな規定や審査があるので、十分に要件を確認してうまく活用しましょう。

スタッフの教育・DXの運営体制を整える

医療DXは導入して終わりではなく、日常の業務の中でしっかりと運用されることで真価を発揮します。新しいシステムを導入した際にはスムーズに運用するために、スタッフの育成体制の整備を並行して行いましょう。

人材の育成をする際には、システムの使い方だけでなく達成したい目的なども共有しておくとより効果的な運用を目指せます。また、万が一トラブルが起きた際の対応方法などをまとめたマニュアルの整備も忘れずに行ってください。

DX化をサポート!ソラストの医療機関経営支援サービス

自院で医療DXを進めたいと思っていても、日常の業務に追われ十分な対応ができない病院経営者様や開業医様は多いでしょう。このような場合に強い味方となるのが、ソラストの「医療機関経営支援サービス」です。

医療機関のDX導入やICT活用はもちろん、収益改善や保険診療・施設基準遵守などをご提供。さまざまな角度から、病院経営者様や開業医様をサポートいたします。

また、リモートで医療事務業務を代行する「スマートホスピタルiisy」も展開。医業に集中できる環境づくりをサポートし、医療機関の人手不足解消に役立てます。

医療DXを推進し、患者さん・スタッフの両方から支持される病院経営を目指そう

高齢化社会、人材不足などの課題を抱える日本の医療において、医療DXの重要性は高まる一方です。患者さんから選ばれる病院、スタッフが働きやすい環境を整えるためにも、医療DXを推進していきましょう。医療DXを進める際は、単にシステムを導入するだけではなく、運用を軌道に乗せる点を重視して、スタッフが一丸となり取り組むことが大切です。

医療DXの推進などでお困りの病院経営者様、開業医様には、ソラストの「医療機関経営支援サービス」の利用がおすすめ。医事業務受託で蓄積した業務運営の経験をもとに、医療機関経営における改善機会の抽出と課題解決をサポートします。DX推進のサポートも実施していますので、ぜひご活用ください。

著者プロフィール

著者:ソラストオンライン
サイト管理人
お役に立つ情報を提供しています。

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