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医療事務

介護における"自立支援"とは何か?その目的は?

公開日/2020.11.27 更新日/2024.07.22

2021年度介護報酬改定の議論が進んでいますが、その論点の一つに”自立支援”があります。介護における自立支援とは何を意味するのか、また介護現場で自立支援を行うために必要なことや課題は何かを整理しました。

※この記事は2020年11月27日時点で公開されたアーカイブ記事となります。

自立支援のやり方はさまざまだが
身体機能の維持・向上を目指すことが多い

自立支援は、介護保険制度の基本的な考え方。要介護者の自立支援を行うために実施される介護を、「自立支援介護」と呼ぶ。ただし、自立と判断する明確な基準は決まっていないほか、特定のやり方もない。

介護保険における自立とは、要介護者ができる限り自分の能力を活かして在宅生活を続けていくことであり、自立支援とはその生活を要介護者が行うことができるように支援することを意味します。自立支援を行うために介護をすることを、「自立支援介護」と呼びます。たとえば、入浴介助の場合、全部介護職がやってあげるのではなく、「着替えは要介護者にやってもらう」「浴槽をまたぐことが難しいので、介護職が介助しつつ、またげるようにするためのリハビリをする」など、本人にできることはできる限りやってもらい、できない部分は介助しながらできるように訓練をしていく介護のことです。

介護保険法第一条でも「(要介護者が)尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービスおよび福祉サービスに係る給付を行うため」と、自立支援をすることが介護保険の目的であると定めています。

ここで注意したいのが、何をもって「自立」と判断するかについては明確になっていない点です。要介護度やADL(食事や着替え、入浴など)、本人の意思など、何を重視するかは介護事業者や介護職個人によって異なります(図表1)。そのため、何を重視するかによって、自立支援につなげる介護のやり方や、「自立支援ができた」と判断する評価も変わってくるのです。 先に挙げた例では、ADLの改善を自立の判断としています。また、一般社団法人日本自立支援介護・パワーリハ学会のように、自立には社会的・精神的・身体的自立の3つがあり、高齢者に対する自立支援として行う内容は、身体的自立の支援であると定めているケースもあります。

具体的な自立支援介護のやり方としては、筋力トレーニングなどの運動をやっている例が多くみられます。この理由としては、自立支援のためには廃用症候群を取り除くことが必要であるからです。廃用症候群とは生活不活発病とも言い、動かない状態が続くことにより、心身の機能が低下し、さらに動けなくなる状態となることです。生活が不活発になると、他者とかかわったり(社会的自立)、物事を決めたり(精神的自立)することもできなくなってきます。そこで、活発な生活が行えるよう、身体機能の維持・向上を目指して運動し、身体的自立を確保していきます。

運動の内容としては、パワーリハビリ(全身各部の使っていない筋を動かすため、軽負荷で行われるマシーントレーニング)のほか、レッドコードトレーニング(天井から吊るされたロープを使ったトレーニング)や体操、歩行訓練など、さまざまあります。

社会保障費の抑制効果が期待される一方
判断基準の明確化が課題

国の財政問題解消策の一つとして、自立支援介護が求められている側面もある。何をもって「自立した」と評価するかという明確な判断基準が定まっていないことが、自立支援介護を行っていることを介護報酬上で評価しようとする場合の課題となっている。

自立支援介護が重視されるようになった大きなきっかけは、2016年11月の未来投資会議での安倍晋三総理(当時)が、できないことをお世話する”お世話型”の介護から、高齢者が自分でできるようになることを助ける”自立支援”に介護の軸足を置くと発言したことからです。そこで2018年度の介護報酬改定では、ADL維持等加算が創設されたほか、リハビリテーションマネジメント加算や生活行為向上連携加算が拡張されるなど、在宅で自立した生活が送れるように支援する介護に対する加算の拡充が行われています。

なお、こうした加算が設定された背景には、要介護度が高いほど介護報酬は高く、要介護度が下がると報酬が低くなるという構造があり、介護事業者側としては自立支援を行うと、得られる報酬が減ってしまうため、積極的に自立支援に取り組みにくいという状況があったことがあります。そのため、自立支援介護に取り組むことに対し、加算という形で報酬上の評価をしたのです。また、一部の自治体では要介護度改善に取り組む事業者に対し、奨励金を交付するなどインセンティブを与えているケースもあります。

自立支援介護を介護報酬上で評価する際の課題となっているのは、自立支援が達成されたかどうかの判断基準をどこに設けるか、ということです。図表1で示したように、要介護度の変化や、ADL維持等加算の算定数などの数値があれば客観的に判断できますが、「本人の意思」のように客観的な判断基準を定められないケースもあります。現在審議が進んでいる2021年度介護報酬改定の中でも、自立支援介護を行った場合の判断基準をどこに置き、どう報酬上で評価するのかが議論されています。

記事協力:株式会社ポラリス代表取締役、医師 森剛士氏
(提供:株式会社日本医療企画)
以上

図表 出典:
図表1 森氏の話などをもとに、編集部作図
図表2 厚生労働省ホームページ、生活不活発病チェックリストより抜粋
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10600000-Daijinkanboukouseikagakuka/0000122331.pdf

著者プロフィール

著者:ソラストオンライン
サイト管理人
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