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医療事務

支え手不足の仕組みを見直す「全世代型社会保障」とは?

公開日/2021.02.01 更新日/2024.07.22

2020年12月に全世代型社会保障制度改革の方針が取りまとめられました。75歳以上の医療費負担増や不妊治療などの少子化対策が盛り込まれています。医療や介護が知っておくべき、医療機関に関わる内容を解説していきます。

※この記事は2021年2月1日時点で公開されたアーカイブ記事となります。

現役世代の負担が大きい構造を
見直す方向に舵を切る

不妊治療は2022年度から保険適用に、待機児童は14万人の受け皿を整備するなど少子化対策を重点化する方針が明確に。

社会保障制度は、年金や医療、介護、子ども・子育てなどのために国がサービスを給付することで、国民の安心や生活の安定を支えるセーフティーネットです(図表1)。社会保障制度の財源である社会保障給付費は保険料のほか、資産収入や税金、借金で賄われていますが(図表2)、税金や保険料を支払う現役世代が減る一方で、社会保障制度で支えられることが多い高齢者が増えており、社会保障給付費が増大しているため、制度の維持が難しい状況にあります。

政府は、給付は高齢者中心、負担は現役世代中心といった構造を改めるため、2019年9月に全世代型社会保障検討会議を設置し、社会保障全般にわたる改革検討を始めました。2020年12月に「少子化対策」と「医療」について、方針が示されました。

少子化対策では、
①不妊治療の保険適用
②待機児童の解消
③男性の育児休業の取得促進
の3つの方向性が示されました。

①については、2022年度からの保険適用が予定されているほか、30万円まで助成額が増額される見込みです。②では2024年度末までに約14万人分の保育の受け皿を整備することとなります。③では、男性の育児休業取得率の公表などを進めることなどが検討されています。不妊治療と仕事との両立のための職場環境の整備などが進むことが期待されます。

外来機能を明確に
かかりつけ医機能は強化

医療機関では感染症対策の強化や外来機能の見直しが行われる予定。一部の後期高齢者の医療費の窓口負担を2割とし、紹介状なしでの大病院の受診に対して、患者に定額負担を求める制度の対象医療機関も拡大する方向で検討されている。

医療に関しては
①医療提供体制
②後期高齢者の自己負担割合
③定額負担の割合
の3つの内容について、方向性が示されました。

①に関しては、新型コロナウイルス感染症を含めた、感染症対策の強化のほか、大病院の外来機能の見直しが盛り込まれています。

感染症対策の強化
都道府県の医療計画に新興感染症等への対応が位置づけられ、感染対策をしながらも、質が高く効率的、持続可能な医療提供体制の整備が進められることになります。

大病院の外来機能の見直し
医療機関が都道府県に外来機能を報告し、かかりつけ医との連携を図っていく制度を新たにつくります(外来機能報告〈仮称〉※)。かかりつけ医をまずは受診するなど、外来医療のかかり方に関して患者などに周知・理解を促すといったことを、各病院でも対応していくことが求められるでしょう。また、オンライン診療の推進や医師の働き方改革への取り組みなども進められていきます。

②に関しては、後期高齢者の窓口での医療費の支払い負担割合が変わることになります。負担能力がある人には高齢者であっても費用面の負担をしてもらう、というメッセージが込められています。現役世代の保険料負担の上昇を少しでも減らすことも目的にあります。

一部後期高齢者の窓口負担割合を増やす
具体的には
後期高齢者で課税所得が28万円以上、かつ年収200万円以上
(単身世帯の場合。複数世帯の場合は320万円以上)
の人は、医療機関での窓口負担割合が、1割から2割となります。所得上位者のおよそ30%の人が該当すると計算されています。

ただし、頻繁に医療機関を受診する人に対しては、実施から3年間は1カ月あたりの増加額を最大3,000円に収める措置が取られることになっています。2022年度後半から施行予定です。自己負担額の増加による一時的な受診抑制も考えられますが、負担が増える対象者の占める割合が過半数を超えるということも考えにくく、医療機関に対する影響は軽微でしょう。

③に関しては、現在、初診時5,000円以上の定額負担が求められている病院の対象が拡大されることになりました。

定額負担を徴収できる医療機関の対象を拡大
現在、紹介状なしで特定機能病院および一般病床200床以上の地域医療支援病院の外来を受診した際は、5,000円以上の定額負担が義務付けられていますが、「紹介患者への外来を基本とする医療機関である一般病床200床以上が新たに対象となります。対象となる病院は今後、各地域の実情を踏まえて決められていきます。

各病院においては紹介患者を中心として専門領域に特化していくのか、慢性的なかかりつけ患者も診ていくのか、自院の外来機能を明確にしたうえで検討をしていくことが求められます。

政府は、少子化対策の強化と高齢者医療の見直しに取り組むことで、全世代型社会保障への改革を、更に前に進めていくとしており、法改正を伴うものについては、2021年の通常国会に法案が提出される予定です。

※外来機能報告(仮称)
各医療機関が都道府県に「医療資源を重点的に活用する外来」(仮称)に関する医療機能を報告すること。病床機能報告制度を参考にされているもので、具体的な報告事項は今後検討される。
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000704872.pdf

図表 出典:
図表1、2ともに財務省「これからの日本のために財政を考える」をもとに作図
https://www.mof.go.jp/budget/fiscal_condition/related_data/202007_kanryaku.pdf

予算案等の数字は、厚生労働省「社会保障の給付と負担の現状(2020年度予算)」をもとに作成
https://www.mhlw.go.jp/content/000651377.pdf

著者プロフィール

著者:ソラストオンライン
サイト管理人
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