自立支援のやり方はさまざまだが
身体機能の維持・向上を目指すことが多い
介護保険における自立とは、要介護者ができる限り自分の能力を活かして在宅生活を続けていくことであり、自立支援とはその生活を要介護者が行うことができるように支援することを意味します。自立支援を行うために介護をすることを、「自立支援介護」と呼びます。たとえば、入浴介助の場合、全部介護職がやってあげるのではなく、「着替えは要介護者にやってもらう」「浴槽をまたぐことが難しいので、介護職が介助しつつ、またげるようにするためのリハビリをする」など、本人にできることはできる限りやってもらい、できない部分は介助しながらできるように訓練をしていく介護のことです。
介護保険法第一条でも「(要介護者が)尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービスおよび福祉サービスに係る給付を行うため」と、自立支援をすることが介護保険の目的であると定めています。
ここで注意したいのが、何をもって「自立」と判断するかについては明確になっていない点です。要介護度やADL(食事や着替え、入浴など)、本人の意思など、何を重視するかは介護事業者や介護職個人によって異なります(図表1)。そのため、何を重視するかによって、自立支援につなげる介護のやり方や、「自立支援ができた」と判断する評価も変わってくるのです。 先に挙げた例では、ADLの改善を自立の判断としています。また、一般社団法人日本自立支援介護・パワーリハ学会のように、自立には社会的・精神的・身体的自立の3つがあり、高齢者に対する自立支援として行う内容は、身体的自立の支援であると定めているケースもあります。
具体的な自立支援介護のやり方としては、筋力トレーニングなどの運動をやっている例が多くみられます。この理由としては、自立支援のためには廃用症候群を取り除くことが必要であるからです。廃用症候群とは生活不活発病とも言い、動かない状態が続くことにより、心身の機能が低下し、さらに動けなくなる状態となることです。生活が不活発になると、他者とかかわったり(社会的自立)、物事を決めたり(精神的自立)することもできなくなってきます。そこで、活発な生活が行えるよう、身体機能の維持・向上を目指して運動し、身体的自立を確保していきます。
運動の内容としては、パワーリハビリ(全身各部の使っていない筋を動かすため、軽負荷で行われるマシーントレーニング)のほか、レッドコードトレーニング(天井から吊るされたロープを使ったトレーニング)や体操、歩行訓練など、さまざまあります。