答えがない問題だからこそ
専門職の視点からサポートする
もしものときのために、自らが望む「人生の最終段階における医療・ケア」について前もって考え、周囲の信頼できる人や医療・ケアの専門職と繰り返し話し合い、その結果を共有する取り組みを「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」と呼びます。昨年11月に、厚生労働省は一般公募によりACPの愛称を親しみやすい「人生会議」と決定し、この取り組みの啓発・普及を進めています。ACPとはAdvance Care Planningの略です。似たような概念に、リビングウィルや事前指定書などがあります。
人生会議は、本人が家族や親族、医師などの医療職、ケアマネジャーやヘルパーなどの介護職と、時には友人なども交えて話し合う場です(図表1)。「自発呼吸ができなくなったら、人工呼吸器をつけてほしい」など、治療や医療的なケアを優先させたり、「何もしないで穏やかに最期を迎えたい」などの希望を伝えていきます。答えがない領域だからこそ、自らが納得できる最期を迎えられるように、事前にこの人生会議を開催することが大切になります。
人生会議で最も重要なことは、「もし自分の生きる時間が限られているとしたら、どのようなことを希望するか」を、本人と周りの人が共有し、尊重することです(図表2)。それによって医療や介護のかかわり方、家族との関係などが変わってくるからです。「少しでも長く生きること」を望むのであれば、どのような医療処置がどこまで必要なのか、今受けている介護サービスで対応できるのか、といった専門的な情報を専門職は提供し、どのような方法を選ぶのかを話し合い、最善と考えられる選択肢を実行していきます。
最近、介護施設などでは、入居時に人生会議を行うことを勧めているところも増えてきています。その場合、職員は、利用者がどのような意向をもっているのかをしっかり把握し、日頃のケアに反映させていくことが大切です。たとえば、最期はご家族と過ごしたいという希望があれば、自宅に戻って過ごしてもらったり、施設内で一緒に過ごすスペースを設けたり、自宅に戻るのであれば自宅で過ごせるように環境を整えたり、急変した際の家族との連絡方法を準備しておくといったことなどです。