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医療事務

人生の最期、どう過ごしたいかをきちんと話し合っていますか?

公開日/2020.08.11 更新日/2024.07.22

人生の最期の迎え方について話し合う取り組みを意味する、「人生会議」という言葉を聞いたことはありますか?家族や親族と会う機会が増える夏休みやお盆などは、お互いに自分の最期の迎え方・過ごし方について考え、話し合う機会にもなります。「人生会議」は何のために行うのか、また医療・介護職はどのように関わっていくべきかを考えます。

※この記事は2020年8月11日時点で公開されたアーカイブ記事となります。

答えがない問題だからこそ
専門職の視点からサポートする

ACP(愛称:人生会議)では、家族や親族だけでなく専門職を交えて、自分が望む最期の迎え方・過ごし方を話し合います。どんな医療や介護を受けたいのかが、重要なポイントの一つになります。専門職は、その人の望む生き方をどのようにサポートできるのかについてアドバイスし、日々の医療・ケアなどに反映させていきます。

もしものときのために、自らが望む「人生の最終段階における医療・ケア」について前もって考え、周囲の信頼できる人や医療・ケアの専門職と繰り返し話し合い、その結果を共有する取り組みを「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」と呼びます。昨年11月に、厚生労働省は一般公募によりACPの愛称を親しみやすい「人生会議」と決定し、この取り組みの啓発・普及を進めています。ACPとはAdvance Care Planningの略です。似たような概念に、リビングウィルや事前指定書などがあります。

人生会議は、本人が家族や親族、医師などの医療職、ケアマネジャーやヘルパーなどの介護職と、時には友人なども交えて話し合う場です(図表1)。「自発呼吸ができなくなったら、人工呼吸器をつけてほしい」など、治療や医療的なケアを優先させたり、「何もしないで穏やかに最期を迎えたい」などの希望を伝えていきます。答えがない領域だからこそ、自らが納得できる最期を迎えられるように、事前にこの人生会議を開催することが大切になります。

人生会議で最も重要なことは、「もし自分の生きる時間が限られているとしたら、どのようなことを希望するか」を、本人と周りの人が共有し、尊重することです(図表2)。それによって医療や介護のかかわり方、家族との関係などが変わってくるからです。「少しでも長く生きること」を望むのであれば、どのような医療処置がどこまで必要なのか、今受けている介護サービスで対応できるのか、といった専門的な情報を専門職は提供し、どのような方法を選ぶのかを話し合い、最善と考えられる選択肢を実行していきます。

最近、介護施設などでは、入居時に人生会議を行うことを勧めているところも増えてきています。その場合、職員は、利用者がどのような意向をもっているのかをしっかり把握し、日頃のケアに反映させていくことが大切です。たとえば、最期はご家族と過ごしたいという希望があれば、自宅に戻って過ごしてもらったり、施設内で一緒に過ごすスペースを設けたり、自宅に戻るのであれば自宅で過ごせるように環境を整えたり、急変した際の家族との連絡方法を準備しておくといったことなどです。

人の気持ちは変わるもの
繰り返し人生会議は行うべき

人生会議で決めたことは、本人の希望でいつでも変更できます。また、医療・介護職も本人の考え方の変化に配慮し、その時々の状況に応じて専門的な見地から適切なアドバイスをすることが求められます。

もう一つ、人生会議を進めるうえで忘れてはならないのは、「繰り返し話し合う」こと。病気をするなど環境が大きく変わると、人の考え方や価値観は変わりやすいものです。介護施設に入居したときと、何カ月も経て死がより現実的になったときとでは、考え方が変わっているかもしれません。そのため、繰り返し確認することが必要となります。

忙しい医療・介護現場にいると、一度決めた方針をころころ変えられては困る、という気持ちになりがちです。しかし、人生の最期を目前に控え、思いが揺れ動くのは当然なことだと理解するとともに、何度でも「今は、どう考えていますか」と聞く姿勢をもつことが大切です。

また、人生会議で積極的な医療を望まない考えを共有しているからといって、それをそのまま鵜呑みにするのではなく、その状況に応じて適宜、家族らにアドバイスなどを行うことも、医療・介護職の役割の一つです。積極的な医療を望んでいなくても、たとえば一時的な心不全で、適切に対処すればすぐに元に戻る可能性が高かったとしたら、その選択肢を提示することは、職責を果たすことになります。

さまざまな医療・介護現場を見聞きしてきた医療・介護職だからこそ、一般の人以上に、この先どんなことが起こるのか、予想できることも多くあります。目の前の人がどのような最期を求めているのかに耳を傾け、専門職として自身の経験や知識などを踏まえて助言・提案をし、そのうえでどうするかは本人やご家族が意思決定する。そのためには、繰り返しの話し合いが必要になるのです。

(提供:株式会社日本医療企画)
以上

著者プロフィール

著者:ソラストオンライン
サイト管理人
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